観賞用はもちろんのこと、贈り物としても人気が高いバラの花。「花の女王」と呼ばれているだけあり、花びらが幾重にも重なる姿は大変美しく、佇まいには気品が感じられます。バラのお花だけで作られた花束を一度はいただいてみたいと憧れる女性は多いものです。バラを一輪だけお贈りしても様になるのも、バラの強みと言えるでしょう。

バラの人気は今に始まったものではありません。古代より、バラの花は世界中で愛されてきました。栽培されていただけでなく、香料や薬として使われていましたし、芸術作品にも登場してきました。最も古いものは、紀元前5000年頃に栄えたメソポタミア文明の「ギルガメッシュ叙事詩」でこの叙事詩に「バラは永遠の命」と書かれています。また、BC3000～1100年頃のクレタ島の壁画にも、バラの花が描かれています。

日本でも古来よりバラの花は親しまれていたようです。バラは西洋の花というイメージが強いかもしれませんが、バラの原種は日本を含めてアジアに生息していました。実際に、奈良時代の700年代に書かれた「万葉集」や「常陸風土記」にバラの花に関する記述が残っています。ただし、これらの文献に登場するバラは、野原に咲く野生の野バラだったようです。バラは、平安時代のベストセラー小説「源氏物語」や当時のエッセイ「枕草子」にも登場します。当時の記述を読み解くと、平安時代にはバラの栽培が始まっていたことがわかります。中国より伝わったバラを日本で栽培していたようです。

これまでは、バラは文章の中に記されてきましたが、鎌倉時代になると、いよいよバラは絵画に登場します。貴族の生活を描いた「春日権現験記」という絵巻物の中に、貴族の屋敷の庭が描かれており、その一部にコウシンバラと呼ばれるバラの絵が描かれているのです。コウシンバラは、中国西部が原産地で、日本から古くから栽培されてきた品種です。西洋のバラが輸入されるようになったのは、明治時代に入ってからです。当然、西洋のバラも人気を博し、明治8年にはバラの番付表が作られるほどでした。相撲のように、バラの横綱や大関が選出されていたのです。

こうして、歴史をひも解いてみると、海外はもちろんのこと、日本でもバラは人々に愛されてきた存在であることがわかりますね。現代では、ほとんどの生花店でバラの花を販売していますから、容易に手に入ります。しかし、ご自分用にバラの花を購入される方は、そう多くはありません。そのため、ほとんどの方が、「バラの花をいただいたらうれしい」と感じるのではないかと思います。お花をお贈りする機会がありましたら、バラの花を選んでみてはいかがでしょうか。