バスケットや陶器などの器からあふれんばかりにお花を入れたフラワーアレンジメント。吸水性のスポンジにお花や葉物などのグリーンを挿して作ります。手法だけ見ると、日本に古くから伝わる「華道」を連想するのではないでしょうか。アレンジメントは、「華道からヒントを得て生まれたのではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実はアレンジメントと華道は、全く異なるルーツを持ちます。

まず、華道はご存知の通り日本が発祥です。起源は諸説ありますが、神に花を供える日本古来の風習から活け花が誕生したと言われています。また、6世紀ごろに仏教とともに大陸から日本に伝わった「供花」がルーツという説もあります。現在に伝わる華道に近い形に完成したのは14世紀末から15世紀半ばの室町時代と言われています。当時誕生した武家屋敷「書院造」に作られた床の間を華やかに見せるために、草花を飾ったと言われています。

一方で、フラワーアレンジメントの歴史は古く、紀元前にまでさかのぼります。華道同様にルーツは諸説あり、紀元前3000年のエジプト、または紀元前2000年頃の地中海沿岸諸国で、神殿に花を捧げていたことがアレンジメントのルーツではないかと言われています。フラワーアレンジメントの基礎が出来上がった時代ははっきりとされていませんが、5世紀から15世紀に栄えた東ローマ帝国時代で、この頃には既に一般家庭で花を飾る習慣があったようです。

この時代にアレンジメントは一気にヨーロッパに広がり、20世紀になるとアメリカでも普及しました。自由な発想でさまざまなアレンジメントが誕生し、それらは「ニューアート」と呼ばれるように。日本の華道とアレンジメントを融合させたスタイルも誕生しました。ちなみに、日本にアレンジメントが入ってきたのは、第2次世界大戦後になってからです。

アレンジメントと華道は、生まれも違えば重視しているポイントも異なります。華道は、単に花の美しさを楽しむだけでなく、花の命を尊び、自分自身の精神性を高めることも目的に含まれています。そのため、あえて枯れた枝や苔などを用いて表現をする手法もあり、単に華やかなだけではないのも華道の魅力の一つと言えるでしょう。

アレンジメントで重視されているのは、ビジュアル面です。そのため、多くの花を用い、すき間なく華やかに仕上げます。どの方向から見ても美しく見えるよう配置することがポイントです。そのため、美しくゴージャスなアレンジメントはお祝いなどのギフトに適していると言えるのではないでしょうか。

アレンジメントの歴史が古いことが意外だと感じた方は多いかもしれません。日本での歴史は、世界と比べるとまだまだ浅いのですが、多くのフローリストが素晴らしいアレンジメントを生み出しています。用いる花やグリーン、配置などによって、さまざまな雰囲気のアレンジメントがありますから、素敵なアレンジメントを探して、大切な方へお贈りしてみてはいかがでしょうか。