デザイン性の高さと気軽に飾れるフラワーアレンジメントは、数あるフラワーギフトの中でも特に高い人気を誇ります。「オアシス」と呼ばれる水を含んだスポンジに花を挿して美しく形成する手法は、生け花を彷彿させるため、「西洋の生け花」と表現されることもあります。そのため、「アレンジメントは、生け花をヒントに生まれたのかな」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし実は、生け花とアレンジメントは全く異なる場所で生まれ、別々の道を歩んできました。

アレンジメントの歴史は非常に長く、紀元前にまでさかのぼります。アレンジメントの発祥となったのではないかと推測されているものが見つかったのは、エジプトです。紀元前3000年頃の遺跡や壁画を調査したところ、神殿で神にアレンジメントのようなものを捧げていたことが判明しました。アレンジメントはもともと、宗教的儀式で用いられていたようです。

アレンジメントが一般的に楽しまれるようになったのは、はっきりとした時代はわかっていませんが、5世紀から15世紀ごろ東ローマ帝国の時代だと言われています。この時代に現代のアレンジメントの基礎ができ上り、徐々にヨーロッパ諸国へと広がっていったと言われています。20世紀にはいると、アメリカにもアレンジメントが伝わり普及しました。時を同じくして、日本からアメリカへ生け花が伝わり、アレンジメントと生け花を融合させたスタイルが誕生。「ニューアート」と呼ばれ、今のアレンジメントもニューアートの流れを汲んでいると言われています。そのため、アレンジメントと生け花が似ていると感じる方がいらっしゃるのかもしれませんね。

アレンジメントが日本に伝わったのは、1945～50年以降とされていて、当時は生け花の先生がアメリカのアレンジメントの本を片手に独学で学び、技術を身に着けたそうです。1960年代に入ってようやく、一般的に普及しました。

こうしてみると、アレンジメントは途中で生け花の影響を受けているものの、生け花とはまったく異なるものであることがわかります。さらに、重視する要素も異なり、アレンジメントは部屋を美しく彩るものであるため、いかに華やかに配置するかを大切にしています。一方で、生け花は独自の世界観を表現するなど、芸術性を重視します。とはいえ、最近ではアーティスティックなアレンジメントを作るフローリストもいらっしゃいます。探してみると、個性的なアレンジメントが見つかるかもしれませんね。手軽に飾れるけれど、歴史が長く奥の深いアレンジメントに注目してみてはいかがでしょうか。