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ヤグルマギク(矢車菊)の花言葉とは?由来や育て方まで詳しく解説

ヤグルマギク(矢車菊)はキク科の1年草。

矢車に似た放射状の形の花を咲かせ、「優美」「優雅」「繊細」「教育」と言った花言葉の他に、「独身生活」というちょっと変わった花言葉を持つ花でもあります。

「あらゆる青の中で最も完璧な青」とも言われ、海外ではサファイアの青さをヤグルマギクに喩えることもあるほど、その色の美しさでも有名です。

この記事では、そんなヤグルマギクの花言葉をはじめ、基本情報、基本的な育て方などをまとめました。

ヤグルマギク(矢車菊)の花言葉とは

ヤグルマギクの花言葉は「独身生活」「教育」「優美」「優雅」「繊細」です。

「独身生活」とは欧米の独身男性がヤグルマギクの花を襟元につける習慣があったことから来ており、「教育」はプロイセンの王妃と王子のエピソードからついた花言葉です。

ドイツではヤグルマギクは国花であり、「希望を諦めない」という花言葉もついていますよ。それぞれの花言葉の由来やエピソードをまとめました。

独身生活

ヤグルマギクの海外での花言葉に「独身生活」があります。

これは欧米の独身男性が、襟元にヤグルマギクをつける文化があったことに由来しています。これは元々ネガティブな意味ではなく、恋に落ちた独身男性がその恋心の証にジャケットの襟のボタンホールにヤグルマギクを刺したり、もしくは「独身なので、恋人を探しています」といったニュアンスでつけていた習慣のようです。

この習慣からヤグルマギクには「独身生活」という花言葉がつき、日本でもこの言葉が定着したようです。

教育

19世紀、プロイセン王国がナポレオンから侵攻を受けます。

プロイセンのルイーズ王妃はその際に3人の王子と共に麦畑に隠れて難を逃れるのですが、その時麦畑に生えていたヤグルマギクで花の王冠を作り、怖がる3人の王子に命の大切さを説き、「希望を諦めないように」と励ましたと言われています。

この3人の王子の内1人がのちのドイツ帝国の皇帝ヴィルヘルム1世であり、ヴィルヘルム1世はこの思い出からヤグルマギクを「皇帝の花」と定めました。

このエピソードに由来し、日本でも「教育」という花言葉がついています。現在でもドイツの国花にもなっており、他にもエストニアなどの国がヤグルマギクを国花としています。

繊細・優美・優雅

その他のヤグルマギクの花言葉は「繊細・優美・優雅」です。

それぞれ明確な由来は明らかになってはいませんが、「優美・優雅」というのはヤグルマギクが古代からヨーロッパや西アジア周辺で広く愛でられてきた花あり、宮廷内でも愛され、皇族や王族などと関係を持つことも多かったことに由来するのかもしれません。

もちろん美しい青色で知られるヤグルマギクの色も優美・優雅そのものです。

一方「繊細」は頭花という特殊な形で、たくさんの小さな花がついているように見えるヤグルマギクの繊細な形状から連想されたとも考えられます。

この他にも「信頼」という花言葉がつくこともあります。

ヤグルマギク(矢車菊)の花言葉には怖い意味がある?

ヤグルマギクの花言葉に怖いイメージのものはありませんが、注意するとしたら「独身生活」という花言葉かもしれません。

元々はマイナスな意味ではなく、ロマンチックな意味さえあることがわかりましたが、結婚についての考え方や価値観は時代や地域によって大きく変わります。

結婚への価値観が多様化した21世紀現在の日本では、「独身生活」という言葉自体は、中々センシティブな言葉かもしれません。

ヤグルマギクをはじめ、現在主に使われている花言葉は西洋で確立したものが多く、土地の文化や習慣が下地になっています。日本で生まれ育った人は当然それを知らないので、いきなりこうした言葉を贈られると少し驚いてしまうかもしれません。

ヤグルマギク(矢車菊)の基本情報

キク科
ヤグルマギク属/英:Centaurea(セントーレア属)
学名 Centaurea cyanus
英名 Cornflower
和名 ヤグルマギク
原産地 ヨーロッパ一帯

ヨーロッパ原産のキク科の一年草です。開花時期は主に4〜7月の春から初夏です。

草丈は元々100cmほどでしたが、品種改良によって現在は大小さまざまなサイズのものが存在します。

乾燥した場所でもよく育ち、古くから麦畑やトウモロコシ畑など、ヨーロッパの穀物地帯に野花や雑草として咲いていました。

ヤグルマギク(矢車菊)の名前の由来

鯉のぼりの先についている飾りの矢車に似ていることから「ヤグルマギク」と呼ばれることになりました。

日本ではヤグルマギクを指して「ヤグルマソウ」と呼ぶことがありますが、正確には「ヤグルマソウ」は全く別の花(ユキノシタ科のもの)を指します。

以前はヤグルマギクをヤグルマソウと呼ぶことが多くありましたが、現在は「ヤグルマギク」という呼び方で統一されつつあるようです。

英語の属名Centaureaはギリシャ神話に出てくる「ケンタウルス」から来ています。神話の中で、ケンタウルスはヘラクレスの矢に打たれた傷をヤグルマギクの薬草で治したというお話があるためです。

英名のcornflowerは小麦の花、生命力の強いヤグルマギクがトウモロコシ畑や麦畑に野花、または雑草としてよく生えていたことから来ています。

ヤグルマギク(矢車菊)の特徴

ヤグルマギクは、放射状に広がる花が矢車のように見える可憐な形状をしています。人類最古の栽培種とも言われ、西アジアやヨーロッパ・地中海周辺地域で長く愛されてきた花です。

ツタンカーメンの棺の中からもヤグルマギクの花輪が発見されていて、ルネサンスの芸術家、ボッティチェリの有名な「春」の絵の中にも、女神たちと一緒にヤグルマギクが描かれています。

現在ではヤグルマギクはさまざまな花色がありますが、原種は青い花で、その青さ、深く澄んだ色の美しさが人々を魅了してきました。

日本には19世紀に渡ってきて、すぐに歌人などに愛され、与謝野晶子や石川啄木もヤグルマギクについての歌や詩を詠んでいます。

ヤグルマギク(矢車菊)はいつの誕生花?

ヤグルマギクは3月1日、3月5日、3月22日、4月11日、4月19日、4月24日、4月26日、5月10日、5月11日、8月2日の誕生花です。

誕生花は元々、ギリシャ・ローマで花や植物に神秘的な力、人に霊感を授ける力が宿ると考えられていたことからはじまり、その誕生日に生まれた人の存在や人格、パーソナリティを表している花や植物をあてはめたものです。

ヤグルマギクを誕生花に持つ人は、優美さや繊細さを持った人が多いかもしれません。

ヤグルマギク(矢車菊)の人気品種

ヤグルマギクは原種は青色の花でしたが、品種改良が盛んに行われ白、紫、ピンクなどの色が誕生しました。

現在は濃淡さまざまな青や紫に加え、黒や濃い赤色のものも存在します。草丈も品種によってばらつきがあり、背が低いものから高いものまでありますが、総じて育てやすく、しっかりとした茎の先に花を咲かせ扱いやすいことから園芸用・切り花として人気です。

ここからは、ヤグルマギクの人気品種をいくつかご紹介します。

パープルハート

パープルハートは、紫色の花芯から純白の筒状花が線香花火のようについている種です。花びらの周りは純白でセンターは紫色、個性的かつ優美な花の形と色で目をひきます。

一般的にヤグルマギクは1年草ですが、パープルハートはモンタナ種と呼ばれる園芸用の種のひとつで、宿根する多年草です。地下茎によって広がって、群生を作って咲きます。

開花時期は4〜7月で、草丈は60cmほどまで育ちます。夏越しさせる場合は花後に花茎を切り戻すなどして蒸れを避けましょう。

アメジストドリーム

アメジストドリームは別名、セントレーア・モンタナ・ペレニアル・コーンフラワー・マウンテン・コーンフラワー・モンタナ・ナァプウィードとも呼ばれます。

紫色の筒状花が線香花火のようについています。深いアメジストのような紫一色の種で、どこか高貴な雰囲気がありますよ。花束にエレガントな雰囲気を出したい時に、アメジストドリームはおすすめです。

葉は毛に覆われており、灰色がかった色味をしています。草丈は50cmほどまで育ち、開花時期は4〜7月です。

スイートサルタン

スイートサルタンは以前はヤグルマギク属の1種でしたが、今ではニオイグルマ属の1種とされるようになりました。

しかし非常にヤグルマギクに近い種で、和名ではニオイヤグルマギクと呼ばれます。

長い茎の先に白い筒状の花を密集させたような花がつき、遠くから見ると綿毛のようにも見えます。花色は他にもピンク、赤紫があり、咲き終わりに赤紫色になるのが特徴です。

また、淡い香りもあり、切り花としてよく利用されている種です。

草丈は60〜70cmほどになり、開花時期は4〜7月です。

ブラックボール

ブラックボールは別名ブラックボーイとも呼ばれ、珍しい黒色(黒がかった紫)色の花を咲かせます。おしゃれでモダンな雰囲気のある種で、珍しい色味とおしゃれさからブーケやフラワーアレンジによく利用されて人気です。

同じように深い色味でそろえるとシックなアレンジになりますよ。

ブラックボールは花茎が多数分岐し、たくさん花を咲かせます。葉は灰色、もしくはシルバーに見えるような色をしています。春先に咲いた花をカットしておくと、夏にもう一度花が咲きます。園芸でも大活躍するお花です。

クラシック ファンタスティック

白か青の花色で、青系は空色〜深い青色まで色が出て、淡い色と濃い色の色味が豊富な種です。特に種から育てた場合、青と白が混じりあい、個体によってさまざまな色味になります。草丈は80cm〜100cmになり背は高めです。

長くしっかりとした茎の先に花をつけます。分枝性があり、次から次にたくさん花を咲かせますよ。園芸で定番とも言える、とても人気の種です。

クラシック ロマンティック

クラシックロマンティックはクラシックファンタスティックとよく似た種で、ファンタスティックが白と青でさまざまな色味を作り出して咲くのに比べて、こちらは白と桃色・もしくは赤の間でさまざまな色味を作り出して咲きます。種から育てると個体によって色んな色になりますよ。

草丈は80cm〜100cmまでになり、花も大きめです。たくさん分枝し、太く長い茎の先に花をつけます。ファンタスティックと同様に園芸で人気で、しっかりした茎のため切り花としても扱いやすい種です。

ブルーボーイ

ブルーボーイは青、青紫の色を咲かせる品種です。

ヤグルマギクは元の原種は青色であり、その深い青色の美しさから人類に深く愛されてきました。ブルーボーイはそんなヤグルマギクの青色の美しさがひと際際立つ品種です。

紫色の小さな花を中央に咲かせ、周りに青い花が咲きます。

開花時期は4〜7月で、草丈は90cmまでになります。ヤグルマギクの中でも背の高い品種のため、花壇の後列などに植えると立体感が出て全体が美しくまとまるでしょう。

アザミグルマ

アザミグルマは、別名「アメリカーナ」とも呼ばれます。さらに「アザミヤグルマ(薊矢車)」、「アメリカヤグルマ(亜米利加矢車)」と呼ばれることもあります。

北アメリカ、中央アメリカ南部、メキシコ北東部原産で淡いラベンダー色の細長い形状の花を咲かせ、花の大きさが大きいことが特徴です。

大輪の花を咲かせ、草丈も60cm〜140cmにまで伸びます。

開花時期は7〜9月の夏で、主に春に咲くヤグルマギクの他の種よりも遅めです。

ヤグルマギク(矢車菊)の育て方

ヤグルマギクは、水はけのよい土で、日当たりと風通しのよい場所で育てましょう。

乾燥に強く、高温多湿が苦手ですが、生命力が強く生育力旺盛のため育てやすいです。基本的には、秋に種をまき、春に花を楽しみ、梅雨前〜夏前には枯れるというサイクルで楽しみましょう。

ここからは、ヤグルマギクの育て方について詳しくご紹介します。

用土・肥料

水はけのよい土が適しています。ヨーロッパの麦畑では雑草化するほどで、荒れた大地でもよく育つ花です。中性、アルカリ性の土を好みます。酸性土は石灰などで中和させましょう。

土が肥沃すぎると大きく育ちすぎてしまい、倒れやすくなります。

一般の草花用培養土が利用できるので、初心者の場合はホームセンターなどで購入するのがおすすめです。

配合の場合は、赤玉土7:腐葉土3の割合で配合するのが良いでしょう。または川砂や軽石、パーライトを少量混ぜ入れます。痩せた土地でなければ、肥料はほとんど必要ありません。

置き場所

日当たりがよく、風通しの良い場所で育てましょう。

多湿を嫌うので、蒸れない環境づくりをしてください。ヨーロッパの穀物地帯では雑草としても生えている花なので、日当たりがよければよく育ってくれます。

反対に日陰や湿った土などでは育ちません。日当たりと乾燥ぎみであることを意識してください。

鉢植えであっても冬には室内に取り込まず、ある程度の寒さに当てた方が茎がしっかりとした株に育ちます。寒風に直接あたる場所は避けて置きましょう。

水やり

ヤグルマギクは多湿を嫌うので、水やりをしすぎないように注意してください。

鉢植えの場合は表面が乾いてきたら水をあげるようにしましょう。

水やりの際は、鉢の底から水が流れ出るまでたっぷりと水やりをします。

地植えの場合は、水やりはほとんど必要ありません。自然の降雨や根からの吸収に任せましょう。土がじめじめと湿っている状態が続くと根がすぐに傷んでしまうので、土が乾いているかの確認はしっかりと行ってください。

植え付け・植え替え

植え付けは基本的に年中行えます。

庭植えの場合は秋に行えば冬の間によく根付き、翌年の花の数が多くなりますよ。

鉢植えにする場合は1年中行えます。

しかし、ヤグルマギクは宿根性で、移植の際に根を傷つけると生育が悪くなるので注意が必要です。真冬の最も寒い時期に植え付けを行うと根を傷めやすいので注意しましょう。

基本的には秋に行い、根をしっかりさせて冬を越えさせます。春に出回る苗は3月頃に植え付けを行います。風通しをよくするため、1株20cmの間隔を開けましょう。

剪定

剪定はあまり必要ありませんが、よく葉が茂ると風通しが悪くなって、うどんこ病などの原因となります。

葉や茎が茂りすぎた場合は、茎を切って光が根まで届くようにしましょう。

肥沃な土地に植えた場合や肥料をあげすぎた場合は、茎が伸びすぎることがあります。その場合は、伸びすぎた茎芽の先端を切る摘芯を行ってください。

また、側枝がたくさん生えてきますが、そのままにしておくと花が小さくなります。大きな花を咲かせたい場合は、どんどん摘み取っていきましょう。

夏の管理方法

ヤグルマギクは基本的に春〜初夏までの1年草のため、夏越しの必要はありません。

夏に種をまく場合は、なるべく涼しい日陰で管理しましょう。

多年性の品種の場合は、真夏の暑い時期には風通しが悪く蒸れてきます。ヤグルマギクはこうした状況が苦手なので、葉は黄色くなって全体的に元気がなくなってしまいます。元気がなくなってきたら、3分の1から半分まで株を切ってみてください。風が通って涼しくなり、光が届くようになると回復し、また新しい葉をつけてくれます。

増やし方

ヤグルマギクは種で増やします。こぼれ種でも発芽して増えるほど強い発芽力ですよ。

花が終わった後に花がらを摘まずにそのままにしておくと、やがて種が実って収穫することができます。強い発芽力で、花壇に直撒きしてもきちんと発芽します。

発芽適温は15〜20℃ですが、夏や冬でも発芽することがあります。基本的には秋に種をまき、越冬させて春に花が咲くのを楽しみましょう。

ポットなどにまいて苗を作る場合は、本葉が5〜8枚ぐらいになったら定植します。

注意すべき病害虫

ヤグルマギクに発生しやすい害虫はアブラムシやヨトウムシ、病気ではうどんこ病や立ち枯れ病に注意しましょう。

ここからは、注意すべき病害虫と対処法をご紹介します。

害虫

ヤグルマギクはアブラムシとヨトウムシが発生しやすいです。

アブラムシは3〜4月ごろに多く発生します。吸汁して株の生育を阻害すると共に、他の病気も誘発する原因にもなるため注意しましょう。

ヨトウムシは蛾の幼虫で、葉の裏に卵を産み付けます。初夏の6月ごろに発生し、あっという間に花や葉を食い荒らされてしまいます。

葉の裏をチェックしてみて、白く変色していたら卵を産み付けられている印です。見つけたらすぐにその葉を切って廃棄してください。

また、幼虫も葉の裏に発生するので、同じように見つけたら葉をその摘み取ります。

病気

ヤグルマギクはうどんこ病に罹る可能性があります。

うどんこ病はうどんの粉のような白い粉が葉や茎などに広がる病気です。多湿により発生し、一度罹ってしまうとそこからどんどんと広がっていきます。

見つけ次第、罹った葉などを摘み取りましょう。

また、立ち枯れ病は土壌から感染し、葉や茎などが黄色から茶色へと変色していきます。土壌から感染するため前年キク科の植物を植えた土壌で連作するのは避け、新しく清潔な土を使いましょう。

まとめ

歴史も古く人類との関わりも深いヤグルマギク。

今回ご紹介した他にも、マリー・アントワネットの愛用した食器がヤグルマギクの柄であったり、古代エジプトの紀元前12世紀ごろの遺跡にヤグルマギクの図柄があったりなど、古代から近現代まで、とても深く人々に愛された花だったことが分かります。

育てやすさから現在も世界中で観賞用、園芸用の花として人気で、その他ハーブ、薬用、染料などにも利用されていますよ。

しっかりした茎と美しい色で、春〜初夏の切り花としてもおすすめです。また、ドライフラワーも簡単に作れるため、切り花にしたらそのままドライフラワーにしてみるのもおすすめです。

魅力たっぷりのヤグルマギクを、ぜひ自分なりの方法で楽しんでみてくださいね。