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多肉植物をハイドロカルチャーで育てる方法や手順を詳しく紹介

多肉植物は、ぷっくりとした葉が魅力的な植物です。多肉植物は花や葉、根に水分を溜められるため、砂漠のような乾燥地帯にも対応できて、育てやすいのが特徴です。しかし、そんな乾燥した環境で育てるような印象がある多肉植物は、実は水栽培の「ハイドロカルチャー」で育てることも可能です。

今回は、ハイドロカルチャーのメリットデメリットやハイドロカルチャーでの多肉植物の育て方について解説していきます。

ハイドロカルチャーとは

ハイドロカルチャーは「ハイドロ」が水、「カルチャー」が栽培という意味で、土を使わない“水栽培”のことです。土の代わりに、中に水を蓄えられる素材を使うので、ヒヤシンスのような直接水に根付かせる球根類の水栽培とは異なります。

ハイドロカルチャーのメリットデメリット

土を使わずに水栽培をするハイドロカルチャーにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、ハイドロカルチャーのメリットデメリットを詳しく解説していきます。

メリット

ハイドロカルチャーは、土栽培と比べて害虫などがつきにくく、臭いもないので室内で安心して栽培を楽しめます。土栽培だと鉢の周囲が土で汚れてしまう可能性もありますが、ハイドロカルチャーならその心配もありません。土が溢れる心配もないので、壁面などにインテリアとして飾りやすいです。

水やりの作業が簡単で手入れがしやすいというメリットもあります。

デメリット

適切な方法でお世話をしないと根腐れが起こりやすいのがデメリットとして挙げられます。土栽培であれば、排出された老廃物を土中の微生物が分解してくれますが、ハイドロカルチャーでは、適切な管理をしなければ老廃物が鉢内に溜まって根が腐ってしまうのです。お世話をする際には注意しましょう。

ハイドロカルチャーで多肉植物は育てられる?

多肉植物はもともと保水力があるため、多くの水やりを必要としませんが、ハイドロカルチャーで育てることができます。土から植え替えをしたり、水栽培になっている多肉植物をハイドロボールに植えつけたりといった方法があります。初心者は水栽培になっている多肉植物をハイドロボールに植えつける方法が簡単ですが、土から植え替えをするのも方法が分かっていれば難しくありません。土から植え替えをする方法は記事の後半でご紹介しています。

多肉植物の種類

多肉植物は種類によって生育型が分かれています。「属名」が分かればどんな育て方をすれば良いのかがだいたい分かるので、チェックしてみてください。

春秋型

「春秋型」は約10〜25℃が生育適温で、日本の春と秋に一番生育する種類のことをいいます。気温が適さない夏や冬は休眠する、熱帯や亜熱帯原産の多肉植物です。 

生育期の春と秋はたっぷり水をやり日光によく当てて、夏は水を控えめに遮光し涼しいところで休眠気味に育てます。冬は水を月一回程度に抑えて室内に取り込み、休眠させて育てましょう。

春秋型の代表的な属は、ハオルチア、エケベリア、セダム、センペルビウム、パキフィツム、ペペロミア、クラッスラなどです。

夏型

「夏型」は約20~35℃が生育適温で、日本の夏に一番生長する種類のことです。春や秋はやや生育が遅くなって冬は休眠します。熱帯原産の種類が多いのが特徴的です。

夏を中心に春から秋にかけてが生育期なので、この期間は水やりも週に1回程度行いましょう。「夏型」といっても、日本の夏は35℃を超える猛暑日が続くため、6~8月は日陰に置き、それ以外は日なたで日光浴させます。秋から徐々に水やりを減らし、冬は休眠するため水は控え室内に取り込むようにします。

夏型の代表的な属は、サボテン類やカランコエ、セダム、クラッスラの一部、アロエなどです。

冬型

冬型の多肉植物を育てるのに適した気温は、5~20℃です。秋から冬にかけて成長期を迎えて、夏は休眠します。基本的に水は少なめに管理し、休眠中の夏は水を控え直射日光の当たらない日当たりが良く、風通しの良い場所に置きましょう。

冬型の代表的な属は、ツルナ科、アエオニウム属、セネシオ属の一部です。

ハイドロカルチャーで育てる際の選び方

ハイドロカルチャーで多肉植物を育てる際に必要なものと、それぞれの選び方を紹介していきます。

  • 鉢(容器)
  • 人工石
  • 交換樹脂剤
  • 根腐れ防止剤

順番に見ていきましょう。

一言で苗といっても、購入する際には主に下記の2種類から選ぶ必要があります。

  • カット苗

ホームセンターなどでは、カット苗という根がついていない多肉植物の枝葉が売られています。このカット苗の場合は、水耕栽培用の根を発根させてからハイドロカルチャーに使います。

自分で育てている多肉植物の葉から一部を切り取ったものも同様に発根させてから使うことも可能です。

  • 土に植えられている苗

土で植えられた苗をハイドロカルチャーとして使うためには、一度土の中に生えていた根を切り落として、水につけて水栽培用の根を発芽させてから使うのがおすすめです。それを手間に感じてしまう方は、そのまま土をよく水洗いして、乾燥させてから植えつけることもできます。

鉢(容器)

ハイドロカルチャーは容器に水を溜めて栽培するので、鉢底に穴がない容器を使います。ガラスなどの透明な素材の容器であれば、水がどこまで入っているのか分かりやすいです。インテリアとして陶器やブリキ缶などを使う場合には、水位を知るために、水位計を用意しましょう。

人工石

人工石にはさまざまな種類があるので、それぞれの特徴なども把握した上で選びましょう。

  • レカトン

レカトンは粘土を高温焼成したもので、発泡煉石ともいわれます。多孔質な石の中に空気や水を保って、根に適度な水と空気を与えてくれる効果があり、いれることで根腐れしにくくしてくれます。

  • ネオコール

スギやヒノキなどの間伐材を加した木炭を加工した材料で、炭の力で脱臭・空気を浄化します。吸水性・保水性に優れた植え込み材です。

  • カラーサンド

カラーサンドは、人工的に色をつけた砂や小石のことをいいます。材料は、ゼオライトやガラスや大理石などを細かく砕いた粒です。見栄えが良くさまざまな色があるので、ガラスの器などにインテリアとして飾ることができます。しかしその一方で保水力がないため、この素材だけで多肉植物を育てるのは難しいです。鉢を2重にして小さな鉢にハイドロボールなどで植えつけし、外側の鉢にカラーサンドを使うようにしましょう。

  • ジェルポリマー(ゼリーボール)

高吸水性ポリマー製で水を含むと膨らみます。カラフルな見た目でインテリア性も高いですが、水分を多く含むことから根腐れを起こしやすく、多肉植物のハイドロカルチャーには向いていません。

  • ゼオライト

ゼオライトは沸石とも呼ばれていて、火山灰が変質してできた天然鉱物です。ハイドロカルチャーには、根腐れ防止剤として鉢底に敷いて使います。

交換樹脂剤

水質を浄化・安定させるために「交換樹脂栄養剤」や「根腐れ防止剤」を入れておく必要があります。これらの違いは効果の持続性です。交換樹脂栄養剤はおよそ3ヶ月程度で効果がなくなりますが、根腐れ防止剤は長期間効果が持続します。

まず、交換樹脂栄養剤とは、イオン交換樹脂に栄養剤(肥料)を付加した小さなゲル状の製品です。イオン交換樹脂は自身が持っているイオン分子を水中の老廃物とイオン交換することで、老廃物を分解したり、ph値を一定に保ちます。

土がないために微生物の繁殖しないハイドロカルチャーは、そのままでは老廃物が分解されないので、溜まった老廃物で植物の育成が阻害されてしまいます。また、ph値を一定に保つことには、植物の根を守る効果があります。

根腐れ防止剤

根腐れ防止剤とは、水中の老廃物を吸収することで水質を浄化し、植物の根を守る製品です。

ハイドロカルチャーで使われる根腐れ防止剤として、有名なものは先ほど紹介した「ゼオライト」と「ミリオンA」です。ミリオンAは、天然の粘土鉱物「珪酸塩白土」を大粒に砕いたものです。どちらも、水質を浄化して水のphを保つ作用があります。

ハイドロカルチャーの植え替えに必要なもの

植え替えの際には。これらのものを用意しておきましょう。

  • 鉢(底に穴があいていないもの)
  • 土入れ
  • 割りばし
  • 水位計
  • 交換樹脂材か根腐れ防止剤
  • ハイドロカルチャー用土

ハイドロカルチャーの植え替え手順

植え替えは、できれば最適時期の5・6月に行いましょう。ハイドロカルチャーの植え替え手順は下記の通りです。

  • ハイドロカルチャー用土を洗う

ハイドロカルチャー用土を鉢の8分目まで入れます。測ったハイドロカルチャー用土はバケツなどに入れて水洗いして、洗い終わったら水を切っておきます。

  • 苗を容器から出す

苗の葉のほこりや土などの汚れを水洗いします。容器を逆さまにして苗を容器から出したら、根についているハイドロカルチャー用土を軽く落とします。枯れた根の部分はハサミで切りましょう

  • 底に根腐れ防止剤か交換樹脂材をまく

水位計を鉢の底に立てます。鉢の底に、底が見えなくなるくらいにまんべんなく、根腐れ防止剤もしくは交換樹脂材をまきます。

  • ハイドロカルチャー用土を低くしく

水位計を底に立てたままの状態で、ハイドロカルチャー用土を鉢の1/4くらいまで入れていきます。

  • 苗を入れ、まわりにハイドロカルチャー用土を入れる

次に苗を鉢に入れて、鉢の中心に苗がくるように用土を調整します。苗の高さが決まったら、その周りにハイドロカルチャー用土を入れていきます。

  • ハイドロカルチャー用土をなじませる

この状態ではハイドロカルチャー用土にすき間があるため、2~3回、鉢を軽く床に「トン、トン」と当ててなじませます。さらに、苗の周りのハイドロカルチャー用土を割りばしで軽くつついて、すき間をなくします。

  • 葉や茎の枯れた部分を切り取る

葉や茎の枯れた部分があれば、ハサミで切り取って手入れします。

  • 水を与えます。

最後に、水挿しで水を与えます。水やりは一箇所だけでなく、できるだけ表面全体に水をかけてください。

正しい水位になると、水位計の「opt」の位置まで、「針(緑色の丸い部分)」が上がります。

ハイドロカルチャーでの多肉植物の育て方

ハイドロカルチャーの植え替えについて見たところで、育て方についても見ていきましょう。

栽培環境

生育型によっても季節ごとの育て方に違いはありますが、多肉植物の基本的な育て方は下記の3点です。

  1. 日当たりの良い場所に置く
  2. 風通しを良くする
  3. 水は月に2回ほどあげる

室内であれば、必ず日当たりの良い場所を確保するようにしましょう。水やりと置き場所を適切にすることが、健康に育てるためには必要です。

水やり

多肉植物は、生育期と休眠期で水やりの量を変える必要があります。ハイドロカルチャーでもその部分は同じです。

ハイドロカルチャーは水を鉢の中に溜めて育てるので、通常の観葉植物でも、水がなくなってから2日~3日ほど待って水やりをします。ハイドロボールなどは、外から乾いているように見えても、鉢の中側は湿っていることも多いです。

生育期には、水が乾いたように見えてから、3日~5日ほど待ってから与えましょう。水は鉢の6分の1まで、容器にもよりますが鉢底1cm程度で大丈夫です。かなり少なめのように感じますが、根腐れを防ぐためには必要なことです。

水位計を使っている場合も同様に、水位計の針がmin(水切れ)まで下がってから3~5日ほど待ってから水をopt(適正水位)まで入れます。休眠期は、月に1~2回、霧吹きで水を上げる葉水のみで、水を与えないように注意しましょう。休眠期に水を与えると株が弱って枯れてしまう原因になります。

もし水を入れすぎてしまったら、鉢の上からタオルなどで押さえて、鉢を傾けて水を出しましょう。水耕栽培には新鮮な水を与えて清潔に鉢内を保つことが大切です。一度に水をいれすぎると、根腐れのほかにも、水が正しく循環しないことから、水が腐る可能性もあります。

肥料

ハイドロカルチャーで育てるときには、土からの栄養分を吸収できないために、適切に肥料を与える必要があります。肥料の種類には、粒状肥料や液体肥料(液肥)などがあります。ハイドロカルチャーに最適な肥料は、肥料の濃度が一定となる液体肥料です。粒状肥料は、土栽培と違ってなかなかうまく吸収されません。

それぞれの植物の生育型に応じた生育期に、水やりの代わりに1か月に1度程度、液体肥料を与えます。容器に書いてある希釈量よりも、さらに2倍の量で薄めたものを与えます。これはあくまで目安の値なのですが、多肉植物は、肥料の上げすぎは枯れる原因にもなるので、薄目の希釈量で与えるようにしましょう。

休眠期は絶対に肥料をやってはいけません。肥料やけを起こすことから、枯れる原因になります。植物の生育型を確認して、肥料を与える適切な時期を調べてみてください。

植え替え

ハイドロカルチャーは、ずっと同じ鉢で育てていると衛生的に良くないです。なぜならば、土に含まれる微生物がいないため、土栽培と比較すると雑菌が繁殖しやすく、周りにはカビや藻なども生えてくるからです。また、根が張って根詰まりする可能性もあります。そのような様子が見られたら、一回り大きな鉢に植え替えをしましょう。

ハイドロカルチャーで育てる際のコツ

最後に、ハイドロカルチャーで育てる際のポイントをいくつかまとめました。ハイドロカルチャーで育てるときに失敗をしないように、しっかりとチェックしておきましょう。

水は定期的に交換する

水耕栽培は、水を交換して鉢の中の衛生面を保つことが何よりも大切です。3~7日に1回は水を取り替えましょう。季節による違いもありますが、暖かい季節、特に水の腐りやすい夏は、2~3日に1回は水を交換してマメに管理をするようにしてください。古い水は長い間そのままにしないように注意する必要があります。

根はしっかりと切り落とす

多肉植物でのハイドロカルチャーを始めるときは、もともと土栽培であった場合には、鉢から生えている根を乾燥させて植え替えるのも良いです。その際には、一度土の中に生えていた根を切り落として、水につけて新しい根を出してからハイドロカルチャーを始めると適応しやすいです。土の中で育った根をそのまま水耕栽培にすると、環境に適応できず枯れてしまうこともあります。

根をいったん切り落としてリセットしてから、水につけてあげると、1週間ほどで水耕栽培に適した新しい根が生えてくるでしょう。

水は根の1/3ほど浸かる程度にする

もともと水が多い環境を苦手とする多肉植物は、根が空気に触れていない環境であれば、酸素不足で枯れてしまいます。全体を水につけておくと根腐れを起こしてしまうので、水は根の1/3ほど浸かるまでに留めておきましょう。

水温を上げすぎない

水耕栽培に適した水温は15〜25度といわれており、これより高かったり低かったりすると、根が傷んでしまいます。水温が上がるにつれて、水中の酸素量も少なくなってしまいます。水中の酸素量も痛みの原因となるため、直射日光が当たる場所に置かないようにしましょう。

置く場所はあまり変えない

多肉植物は急な環境の変化に弱いため、頻繁にあちこちへ移動させると枯れることがあります。レースのカーテン越しの窓辺などの直射日光の当たらない明るい場所に置いて、あまり動かさないようにしましょう。

多肉植物はハイドロカルチャーでの生育もおすすめ

ハイドロカルチャーは「水栽培」のことで、土栽培と比べて害虫などがつきにくい、臭いもないので室内で育てやすい、鉢の周囲が土で汚れる心配がないなどのメリットがあります。

多肉植物はもともと保水力があることから、あまり水やりを必要としませんが、ハイドロカルチャーで育てることも可能です。

土から植え替えをしたり、水栽培になっている多肉植物をハイドロボールに植えつけたりといった方法があります。ハイドロカルチャーでの多肉植物の生育を考えている人は、ぜひ記事を参考に挑戦してみてください。

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