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キュートな実ものヒペリカム|花言葉や人気品種、基本の育て方

赤色や乳白色の実が可愛らしいヒペリカム。花を楽しむよりも、実を眺めて楽しむ実ものとして多く流通しています。ヒペリカムはとてもきれいな花を咲かせるので、鉢植えで育てて花を鑑賞するのもおすすめですよ。

今回は、チャーミングな赤い実ものとして人気のヒペリカムについて、植物の特徴や人気の種類、花言葉や基本的な育て方まで解説していきます。

ヒペリカムの基本情報

科・属 オトギリソウ科・オトギリソウ属
和名 ヒペリカム
英名 Hypericum
学名 Hypericum
原産地 中国
園芸分類 草花
草丈・樹高 20センチ~1メートル
耐寒性/耐暑性 強い/強い
開花時期 6月~7月

ヒペリカムの特徴

オトギリソウ科のヒペリカムは、古くから日本では薬用植物として親しまれてきました。庭木や公園樹としても多く植えられ、通年美しい葉を楽しめる常緑低木となっています。

世界で300種類以上が分布するヒペリカムは、古くから日本で親しんだオトギリソウと、海外の新品種を加えた総称です。開花後に結実した姿のほうが人気で、アレンジメントのアクセントとして添えられることも多いです。

ヒペリカムの名前の由来

ヒペリカムは江戸時代に日本へと渡来してきました。観賞用や薬用として親しまれていた他にも、ヨーロッパ地方では古くから祭典などで使われ、十字架と共にヒペリカムが飾られていたそうです。魔よけとしてよく使われていたのでしょう

ギリシャ語の「hypo(下)」と「erice(草むら)」、もしくは魔よけとして像などの上の方に飾られていたことから、「hyper(上)」と「eikon(像)」が語源だと言われています。

ヒペリカムの花言葉

ヒペリカムは、6~7月頃になると、枝先に3~4センチの小さな花を咲かせます。5枚の花びらからなる花の形は梅に似ていて、つややかで光沢を持っています。たくさん見える金色のおしべが特徴的です。そんなかわいらしい花姿のヒペリカムには、魅力的な花言葉がいくつかあります。

きらめき

「ヒペリカム」には、「きらめき」という花言葉があります。これは、まるで黄金に輝くような花の色に由来しています。真っ赤な赤い実からは想像できない、存在感のある花に驚いた方も多いのではないでしょうか。放射線状に広がるおしべも、まるで太陽の光線のようで「きらめき」という花言葉がつけられたのも納得できます。

悲しみは長く続かない

ヒペリカムは、花が咲き終わってからすぐに、赤やピンク色のにぎやかな色の実を付けはじめます。美しい花が散って寂しく感じても、可愛い実が結実するので「悲しみは長く続かない」の花言葉が付けられました。

元気・有用

「元気・有用」は「ヒペリカム・カリシナム」という品種に付けられている花言葉です。光沢を持つ鮮やかな黄色い花が、空へと元気よく咲いている健気な姿や、薬用として使えるヒペリカムの有用さから付けられています。

気高さ

「気高さ」は、ヒペリカムの仲間である「ビヨウヤナギ」の花言葉です。ポップでチャーミングな印象のヒペリカムとは違って、ビヨウヤナギはしっとりとした落ち着いた佇まいを持っています。気品を感じさせる咲き姿から、「気高さ」の花言葉が付きました。

ヒペリカムの花言葉は少し怖い?

ヒペリカムはオトギリソウ属の植物ですが、オトギリソウの花言葉には「秘密」「裏切り」と少し怖い言葉が並びます。漢字では「弟切草」とも表記される、なんだかただならぬ雰囲気です。あくまで言い伝えですが、「秘密」「裏切り」の花言葉には、ある兄弟のエピソードがあるとされています。

同じ女性に恋をした兄弟の悲劇

時は平安時代、とても仲の良い2人の兄弟がいました。顔もそっくりで性格もそっくり、食べ物の好みまで似ている仲睦まじい兄弟です。そんな兄弟は、同時に1人の女性に恋してしまいます。恋を巡って兄弟の仲は険悪になり、ある日女性を巡った揉め事が起こります。揉め事は命の取り合いにまで発展し、弟を刀で斬った兄は、冷たくなった弟を見て、ようやく取り返しのつかない過ちに気づきます。

兄は弟のために立派なお墓で弔い、争いの原因となった女性とも結婚せず、毎日弟の墓参りをしました。

そんなある日、お墓に見たことのない黄色い花が咲いていたのです。黄色は生前、弟が好きだった色です。葉を日の光に透かすと黒点が見えました。弟が好きだった黄色い花に、血の染みのような黒点がある、弟はまだ自分を恨んでいるのだ、と兄は自分の罪を嘆くのでした。

恋心が招いた悲しいエピソードですが、オトギリソウを煎じて傷を洗うと傷口が治ると言われています。悲しい兄弟を憐れんだ神様が、オトギリソウに霊力を授けたという言い伝えです。

実を楽しむヒペリカム

さて、少し悲しいエピソードも持っているヒペリカムですが、可愛らしい花の姿はそんな言い伝えを微塵も感じさせない明るさです。かわいい花が咲き終わって10〜11月頃には、赤やピンク、グリーン、イエローなど、色とりどりのころんとした実を作り始めます。実はどれも上向きに付いていくので、空を見上げる様子が花のようにも見えます。つんと先を尖らせて小さいイチゴのように結実する様子はとても愛らしいです。

アレンジメントのアクセントに活躍

鑑賞価値の高いヒペリカムの実は、花束やフラワーアレンジメントのアクセントとして多く使われています。可愛らしいブーケの中に、ちょこんと赤い実を付けたヒペリカムに見覚えがある方も多いのではないでしょうか。最近では、白い実のヒペリカムをブライダルブーケなどに取り入れることも増えています。

秋らしさを感じる旬の実ものとして飾ったり、クリスマスリースのアクセントとして実を使ったり、花の種類がだんだんと少なくなる秋冬に、明るい彩りを添えてくれるのがヒペリカムの魅力です。

人気のあるヒペリカムの種類

ヒペリカムが人気のヨーロッパでは、園芸用に改良された品種が多数存在します。その中でも代表的な品種をご紹介します。

ヒペリカム・カリシヌム

ヒペリカム・カリシヌムは、常緑の葉に斑状模様が入っている、葉の鑑賞価値も高い品種です。交雑種には「ヒペリカム・モゼリアヌム」、常緑ではなく、落葉もしくは半落葉の性質を持つ「ヒペリカム・アンドロサエマム」があります。

ヒペリカム・モゼリアヌムもヒペリカム・アンドロサエマムも両品種とも黄色い花が咲き、アンドロサエマムのほうがやや小ぶりの花を咲かせます。アンドロサエマムは、ジューシーなイチゴのような色づいた実が、頂部にぎゅっと集まって付ける可愛らしい姿が人気です。

ビヨウヤナギ

ビヨウヤナギ(美容柳)は「ヒペリカム・キネンシス」という品種名を持つ、中国原産の品種です。先ほどの花言葉についての項目で、「気高さ」の花言葉を持つヒペリカムとしてご紹介しました。樹高は1メートル程度の低木で、柳に似た葉が特長です。6〜7月にかけて黄色い花を咲かせます。

キンシバイ

キンシバイ(金糸梅)は「ヒペリカム・パツルム」の品種名を持つ、中国原産の品種です。梅のような金色の花が咲くのが名前の由来です。ヒペリカムといえば、このキンシバイを指すことが多く、庭木としても多く植えられているなじみ深い品種です。

ヒメキンシバイ

ヒメキンシバイ(姫金糸梅)は、セイヨウキンシバイ(西洋金糸梅)とも呼ばれる、「ヒペリカム・カリシナム」という品種です。ビヨウヤナギとよく似ている品種ですが、ヒメキンシバイの原産地はトルコ地方となっています。草丈は20〜60センチ程度と、1メートルにも満たないこじんまりとした草丈です。

ヒペリカム・アンドロサエマム

南ヨーロッパを原産地とする「ヒペリカム・アンドロサエマム」は、かなり小ぶりな花を咲かせるので「小坊主弟切草(こぼうずおとぎりそう)」の和名も持っています。定番の赤やピンクの実以外にも、乳白色がやさしげな雰囲気を持つ、クリームの実もあります。ふんわりとしたやさしいクリーム色は、冬の実ものとしても人気です。

ヒペリカムの育て方

切り花や実ものとしてのイメージが強いヒペリカムは、強い対熱性と耐寒性を持っているので、自宅の庭などで栽培することもできます。丈夫な性質で、初心者でも育てやすいので、開花から結実までを楽しみたい人は、ぜひ育ててみてはいかがでしょうか。

植え付け

初夏に開花するヒペリカムは、3〜4月、9〜10月頃に植え付けましょう。鉢植えで入手したヒペリカムも、どんどん枝が伸びるので、庭へと植え替えることをおすすめします。

置き場所・水やり

地植えの場合は基本的に雨天に任せておきますが、夏場などの乾燥する時期には水分が不足しがちなので、様子を見て水やりを行いましょう。茹だる暑さの日中に水やりをすると、高温になった水が根にダメージを与えるので、涼しい朝方や、日が落ちた夕方に水やりをしてください。

ヒペリカムは日当たりの良い場所が好きなので、明るく日光がたっぷり当たる場所で栽培します。ただし、夏場の強い直射日光には弱いため、遮光対策をするか半日陰を選んでおきましょう。

肥料

ヒペリカムの植え付け時に、緩効性肥料をあらかじめ土に混ぜておくのがおすすめです。植え付けの適期である3〜4月、9〜10月頃に、同じく緩効性肥料を与えます。肥料焼けを起こしやすいので、与えすぎには十分注意してくださいね。

剪定

ヒペリカムの剪定は、ぐんぐん新芽が伸びてくる3月頃、もしくは花が咲き終えて実を作る前の9~10月頃に、樹形を整える程度の剪定を行いましょう。伸びすぎた枝を付け根からカットして、見た目が良いように整えてください。適度に剪定してあげると株にボリュームが出るだけではなく、うまくいけば花と実を年内に2回楽しめるチャンスもあります。

これ以上株を生長させたくない場合は、株元から20~30センチ辺りで大胆に切り戻してください。3月頃に行えば、剪定後も新芽が伸びてくれるので大丈夫ですよ。

植え替え

根が丈夫な性質のヒペリカムは生命力が強いので、鉢植えの植え替えを行う場合は、真夏と真冬を除けばいつでも植え替えられます。

 

【植え替えの手順】

(1)鉢から株をやさしく取り出します。

(2)根に付いている土を崩さないよう、ひと回り大きい鉢へと植え替えます。

(3)株の周りに土を足していき、株を固定させましょう。

(4)たっぷり水を与えたら、しばらくは半日陰で管理してください。

 

生長スピードの早いヒペリカムは、1年に1回程度植え替えが必要になるかもしれません。根詰まりを起こして養分がうまく行き渡らないと、実つきが悪くなります。水やりのときに水が流れ出にくくなったら、根詰まりを起こしていないかチェックしましょう。

開花

ヒペリカムの開花は、6〜7月頃の初夏です。黄色の花は数日で咲き終わってしまいますが、次々に咲くので開花期間中は長く楽しめます。花が咲き終わると、中央に丸い実が作られていき、だんだんと色づいていく様子を観察できます。実が色づいていく様子は、長いと2ヶ月以上も楽しめるので、秋の楽しみのひとつになりそうですね。

実ができてから6月下旬頃に早めに剪定を済ませると、ボリュームが出て枝から秋に開花して、再び実が作られます。年に2回、可愛らしい花と実を楽しめるので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。成功させるコツは、早めの剪定後に日光によく当てて、夏の間に若葉をたくさん生やすことです。

ヒペリカムの実を楽しむには

ヒペリカムの実を楽しむには、たくさん実を付けるためのコツが必要です。日光が好きなヒペリカムは、とにかく日当たりの良い場所で育てましょう。

中でも、ヒペリカム・アンドロサエマムは、実の鑑賞価値が高い品種です。たくさん実をつけるために、真夏の直射日光を避けながら、たっぷり日光浴させて、花をたくさん咲かせましょう。剪定で新芽を増やして、春と秋に緩効性肥料をしっかり与えるのも、花の数や実つきを良くするコツです。

ヒペリカムの実が黒ずんでいるときは?

ヒペリカムの実が、色づき出す前に、小さいままで黒ずんでしまっていたら、日光が足りていないか、反対に日光が強すぎるかの原因が考えられます。株の様子を見ながら、日光が当たる量を調整してみてください。

ヒペリカムを増やしてみよう

ヒペリカムは、種まきからの実生や、挿し木、株分けなどの方法で株を増やしていきます。それぞれの増やし方の手順を順にご紹介するので、ヒペリカムを増やして、もっとお庭をにぎやかにしてみてくださいね。

種まきの増やし方

種から育てる場合には、採取した実をしっかり乾燥させて、カラカラになった実から種を取り出します。翌年の春まで保存して、庭などに植え付けましょう。

 

【種まきの手順】

 

(1)育苗箱などに土を入れて、種をばらまきます。

(2)土が乾かないよう注意して、しばらく日陰で管理しましょう。

(3)2~3枚まで本葉が育ってから、良い生育の苗だけをポットへ移します。

(4)乾燥に注意して水やりを行い、日当たりと風通しの良い場所で管理しましょう。

(5)草丈が15~20センチまで生長したら、鉢や地面へと植え替えてください。

挿し木の増やし方

ヒペリカムを挿し木で増やすには、5~7月頃が適しています。

 

【挿し木の手順】

 

(1)しっかり育成している健康な枝を選んで、10~15センチの長さにカットします。

(2)葉を3、4枚残して、残りの葉は切り落としてください。

(3)挿し穂の切り口を斜めにカットしたら、切り口を1~2時間水に浸けておきます。

(4)土を入れた育苗ポットなどに挿し穂を挿しましょう。

(5)土が乾かないよう注意しながら、しばらくは日陰で管理します。

(6)発根して安定したら、鉢植えや地植えなどを行ってください。

株分け

横へ横へと増えていくヒペリカムの品種は、株分けで増やしやすいです。挿し木と同じく、5~7月頃に植え替えなどと並行して行うのがおすすめですよ。株を土から取り出したら、枝が均等に付くようにして、手作業やナイフなどの刃物で株を切り分けていきます。株分け後は植え付けと同じ手順で、鉢植えや地面へと植え付ければ完了です。

まとめ

赤やピンク、クリーム色など、カラフルな実をたくさん付けるヒペリカム。チャーミングな実だけではなく、梅に似た黄色い花も楽しめます。

ヒペリカムの花はすぐに萎んでしまうので、じっくりと鑑賞したい場合は鉢植えや地植えなど、自宅でヒペリカムを育ててみましょう。開花から結実まで楽しめるヒペリカムは、常緑性なので冬の間も葉を落とさず、お庭を彩ってくれます。

育てたヒペリカムを切り花として飾ったり、他の花と併せてみたり、何本か束ねて誰かにプレゼントするのも喜ばれそうです。リース作りのアクセントとしても活躍してくれます。

「きらめき」の花言葉を持つヒペリカムを暮らしに取り入れて、春から冬まで通年楽しめるヒペリカムを育ててみてはいかがでしょうか。