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オリーブの木の種類|実は食べられる?

アンティークな色合いと美しいシルエットが魅力のオリーブは、とても人気がある観葉植物のひとつです。

そんなオリーブの木になる実からは、オイルや漬物などの加工食品が作られます。私たちの暮らしにすっかり溶け込んでいるオリーブオイルは、健康志向のオイルとして注目されている調味料のひとつです。

世界の各地で栽培されているオリーブにはたくさんの品種がありますが、品種によって実がオイル向きか漬物向きか異なることをご存じでしょうか。

今回は、観賞価値も高く食用としても有用なオリーブについて、栽培されている品種や歴史、神話との関係性なども含めて詳しくご紹介していきます。

 

オリーブの基本情報

科・属 モクセイ科・オリーブ属
和名 阿列布(オリーブ)、橄欖(かんらん)
英名 Olive
学名 Olea europaea
原産地 地中海地方、中近東、北アフリカ
花言葉 「平和」「知恵」

常緑性のオリーブは、一年を通して落葉しないため、いつでも美しい葉を鑑賞できます。地中海の乾燥気候で育つオリーブは乾燥に強く、たくましい生命力も持っています。

主な産地は空気がからりとしているイタリアやスペインで、全世界で流通しているオリーブのうちの半分以上をシェアしています。

地中海の乾燥した気候は、農作物を栽培するうえでは最適な気候とは言えません。そんな中でもたくましく育ち、毎年実を作ってくれるオリーブは、重要な食糧源として大切にされてきました。

オリーブの実はピクルスなどの長期保存食として加工され、絞られた油は「黄金の液体」「最強の薬」として古くから人々の暮らしに寄り添ってきたのです。

 

オリーブの魅力は美しい葉とシルエット

オリーブには、美味しい実が収穫できる以外にも魅力がたくさんあります。例えば、樹形の美しさです。シャープな印象のオリーブの木は、素朴さを持ちながらもスタイリッシュで、どんなインテリアとも溶け込んでくれます。

先が少し尖った葉は光沢を持っていてつややかで、裏返すとやや銀色めいた褪せた色合いをしています。ユーカリの葉にも似ているくすみがかったスモーキーな風合いは「オリーブグリーン」とも呼ばれています。

 

オリーブの花

オリーブの木は、初夏になると白色や黄白色の小さな花をまとまって咲かせます。花期は約1週間ほどで、この開花中に他の品種のオリーブからの花粉で受粉すると結実します。

結実したオリーブは、料理でおなじみのオリーブオイルや、野菜を調味液に漬け込んだピクルスなどに加工され、食用としても楽しまれます。

 

オリーブは女神のシンボルツリー

植物や花には、神話に関係したエピソードを持っているものが多く存在します。花の誕生秘話が神話で語られていることも多いのです。

オリーブの木もそのひとつで、ギリシャ神話に登場します。女神アテナが生んだシンボルツリーとして語り継がれているのです。

 

創世記にも登場するオリーブ

さて、皆さんは「平和のシンボル」というと、真っ先に何を思い浮かべるでしょうか。

ハトがくちばしに枝を咥えている姿を思い浮かべた方は、その枝をよく思い出してみてください。実はこのハトが持っている枝は、オリーブの枝なのです。

ハトが平和のシンボルと言われているのは、旧約聖書のエピソードに由来しています。

 

ノアの方舟におけるオリーブ

旧約聖書におけるアダムとイブの、エデンの園から追放された話は有名ですね。「知恵の木の実」を神から禁じられていたにも関わらず、蛇の誘惑に負けて食べてしまったお話です。

「ノアの方舟」で登場するノアとは、この人類の始祖であるアダムとイブから10代目にあたる人間です。ノアの世代では人間たちが堕落した日々を送っていました。怒った神は大雨を降らせて大洪水を起こし、地上から人間を消そうとします。

正しく清い心を持つノアを助けてやりたいと思った神は、「方舟を造って、家族と動物たちを乗せなさい」と伝えます。

言われた通りにノアが方舟を造ると、7日後には大雨が降り出して40日もの間ずっと降り続けました。ノアは言いつけどおりに、自分の妻と3人の息子、その息子の妻たちを含めた8人と、地上の動物たちをそれぞれオスとメスで1対になるように方舟へ乗せます。

ノアたちの方舟は、大洪水が起こった地上から山の上に辿り着きます。様子を確認するために、ノアは40日目に一羽のカラスを放ちましたが、まだ水は引かずすぐにカラスは戻ってきました。それから7日後、今度はハトを放つと、オリーブの枝をくちばしに咥えて帰ってきました。ハトが持ち帰ったオリーブから、ノアは洪水が収まったことを知ります。

神は、方舟から降りたノアたちに「人を滅ぼす洪水は二度と起こさない」と誓い、約束の証として空へ大きな虹を架けました。

造り直された地上からハトが運んだオリーブは、神と人間が和解したことの象徴であり、新たな世界を共に築くという平和のシンボルになったのです。

 

種類が豊富なオリーブの木

ギリシャ神話た旧約聖書にも登場するオリーブは、人間の暮らしだけではなく文明にも深く関係していたのですね。

そんなオリーブですが、現在では品種改良などによって1,000種類以上もの品種が存在しています。

豊富な種類があるオリーブですが、その品種は樹形によって大きく2種類に分けることができます。上へとまっすぐ伸びる「直立型品種」と、横広がりに伸びる「開帳型品種」です。

直立型品種には、ミッション、シプレッシーノ、コラティーナ、モライオロなどの種類があります。

開帳型品種では、ルッカ、マンザニロ、フラントイオ、ネバディロ・ブロンコなどがポピュラーです。

観葉植物としてオリーブを室内で育てることを前提にすると、室内のスペースでもコンパクトに収まりやすい直立型の品種がおすすめです。一方で、地植えなどにしてのびのびとオリーブを育てていきたい場合には、ボリュームのある開帳型がおすすめですよ。

 

オリーブの実は用途に適した品種がある

オリーブを育てるのでしたら、樹形の鑑賞だけではなく結実まで楽しみたいものです。

しかし、オリーブの木には品種によって、オイル向きの実を作るもの、漬物向きの美味しい実を作るもの、主に他の木の受粉用として使われるものなど、用途によって適した品種があることをご存じでしょうか。

せっかく食用にとオリーブを育てて収穫しても、漬け込んだ実があまり美味しくなかったら悲しいですよね。

実の収穫を目的にして育てる場合には、自分の求める用途に合った品種を選びましょう。

 

オイル向きの品種

昨今の健康志向に欠かせない存在であるオリーブオイルは、豊富に含まれているオレイン酸が悪玉コレステロールを減少させる効果があります。

体内の酸化を防ぎ、老化や生活習慣病の予防としても効果的です。

まずは、オイル加工に適した品種からご紹介していきましょう。

 

フラントイオ

「オリーブ・フラントイオ」は、イタリアのトスカーナ地方が原産地です。病気や害虫に強く丈夫な性質を持ち、環境適応力が高い品種でもあるので世界各地でも栽培されています。

フラントイオの実は楕円型で小ぶりなのですが、オイル含有量がとても高いため上質なオイルを多く抽出できます。採れたオイルは甘口でフルーティーな味わいです。

ある程度の自家結実性を持っているので、うまくいけばフラントイオだけでも実が収穫できます。

 

モライオロ

「オリーブ・モライオロ」は、同じくトスカーナ地方を原産地とするオリーブです。先述したフラントイオと並ぶほど、上質なオイルが採れる代表品種です。樹形はどっしりとしていて、葉の表面が深みのあるダークグリーンで、葉裏がシルバーグリーンであるのも魅力のひとつです。生長が速く、耐寒性にも優れています。

実は熟すにつれて徐々に紅色へと染まっていき、完熟したものはそのまま食べてもフルーティーな香りを味わえます。ゆったりと生長していく性質なので、剪定をそこまで必要とせず、室内で育てる鉢植えとしてもおすすめの品種です。

 

コロネイキ

「オリーブ・コロネイキ」はギリシャを主な栽培地としており、ギリシャにおけるオリーブ栽培の半分以上はコロネイキが育てられています。

ひとつひとつの実は小ぶりなのですが、枝にたくさんの実がつく様子はかわいらしいですよ。

抽出できるオイルは20%程度と少量になるものの、フルーティーで高品質な高級オイルが採れます。花粉量が多いことから受粉樹としても用いられています。

 

漬物向きの品種

続いて、漬物向きの実が収穫できるオリーブの種類をご紹介します。

酢をベースにしたピクルス液などに漬け込んだオリーブの実は、日持ちすることから保存食として重宝されてきました。今でも幅広く料理に使われ、ワインのつまみとしてもふさわしい一品です。

ミッション

先がやや尖っていて、ハート型にも見える長円形の実が採れるのが「オリーブ・ミッション」です。カリフォルニア州で発見されたオリーブですが、耐寒性を持っているため日本国内でも栽培されています。生長スピードがゆったりとしているオリーブの品種です。

主に漬物として用いられますが、オリーブオイルに加工しても美味しくいただけます。ミッションの葉はシルバーグリーンで美しいことから、観葉植物としても人気が高いです。

 

マンザニロ

小さなリンゴのような形の実がかわいらしい「オリーブ・マンザニロ」は、食用にはぴったりの品種です。マンザニロの大きくてやわらかい実は、塩漬けにする以外にも、シロップ漬けといった甘口にもぴったりで、最もポピュラーな食用品種と言えるでしょう。オイルとしても加工できますが、マンザニロの実には苦味があって油分率が低いため、オイル用としてはやや不向きです。

先ほどご紹介したミッションとマンザニロは相性が良く、共に栽培されているケースが多いです。

 

チプレッシーノ(シプレッシーノ)

「オリーブ・チプレッシーノ(シプレッシーノ)」は、シルバーグリーンの葉が美しい品種です。原産地のイタリア・シチリア島で盛んに栽培されており、日本でも多く栽培されています。

もともとは防風林として植えられていたオリーブなので、雨や風に強いという丈夫な特徴があります。寒さにも強く、マイナス10度までには耐えられる品種です。日本の冬にも耐えられる耐寒性から、庭木としても楽しまれています。

チプレッシーノは樹皮がグレーがかった美しい色をしているのも特徴のひとつで、この色は生長につれて徐々に黒く変化していきます。楕円形の実はピクルスをはじめ、オイルにも加工され、花粉量が多い性質から受粉樹としても活躍する品種です。

 

オリーブは観葉植物としても人気

丸みを帯びた細長い葉が愛らしいオリーブは、樹高が高くどんどん伸びていくイメージがあります。しかし観葉植物として流通している品種は、室内向けとして育てやすい卓上サイズから販売されていますよ。

飾りたいスペースに適したサイズを見つけやすいのも、人気の理由のひとつですね。もちろん自宅のシンボルツリーとなるような、存在感抜群の鉢植えも販売されています。

 

鉢植えや地植えで栽培可能

オリーブは地中海の温暖な気候でなければ育たないと思われがちですが、日本の環境にも適応するよう耐寒性に優れた品種を選べば、庭木として育てていくこともできます。寒さに弱い品種などは、鉢植えとして室内で育てていけば問題ありません。

地植えの場合、オリーブはぐんぐん生長していくことが予想できるので、周囲のスペースに余裕を持って植え付け、のびのびと育ててあげましょう。

 

【地植えでの植え付け手順】

(1)おおよその植え付け位置を定め、腐葉土や堆肥を混ぜつつ土を耕します。

(2)粘土質の庭土は排水性が悪いので、広範囲で深めに耕すようにしましょう。

(3)苗木の大きさに合わせたサイズの穴を掘ります。

(4)周りよりやや高く土を盛ったらくぼみを作り、苗木を植え付けます。

(5)周りの土を戻していき、植え付けた苗木を安定させてください。

(6)根が浅い頃は支柱で固定し、たっぷり水やりをして根付かせましょう。

 

オリーブの花を咲かせるには?

オリーブを育てて実の収穫を目指している人は、開花させるところからスタートする必要があります。開花には植物によってそれぞれ異なる条件がありますが、オリーブの開花条件にはどのようなものがあるのでしょうか。

オリーブは、株が一定の寒さを経験することによって開花が進みます。具体的な気温条件は10度以下の状態を10日間以上経験させることが開花条件です。鉢植えのオリーブを主に室内で育てていると、なかなかこの条件を満たせません。しかし10度以下になったからと、今まで室内で管理していた株をいきなり外に出してしまえば、株が温度変化に耐えきれずに枯れてしまう恐れもあります。寒くなってきたら鉢植えを徐々に外気の寒さに慣らしていき、開花条件をクリアするようにしましょう。

 

オリーブの実を収穫してみよう

無事に開花条件を満たしても、植物は受粉をしなければ結実しません。早く実を作るオリーブの品種は「早生品種」、結実までに時間を要するものは「晩生品種」、この中間ぐらいの日数で収穫できる「中生品種」の3種類に分けることができます。

オリーブは自家受粉で結実するものの、自家結実性はそこまで強くありません。オリーブの品種には同品種の花粉では受粉しにくいものが多いので、受粉用の花粉量が多い品種を一緒に栽培することで成功率を高めます。オリーブの花期は1週間程度なので、開花している間に受粉させるため、できるだけ開花時期が重なる品種同士を組み合わせる必要があります。

 

人工授粉にチャレンジ

室内で栽培しているオリーブは、自生や屋外で栽培されるオリーブのように、花粉を運ぶ昆虫がやってきにくいですよね。風に乗って花粉が運ばれることもほとんどないので、受粉の成功率がさらに低くなってしまいます。

オリーブを室内で栽培している場合は、人が手を加えて人工的に受粉を行うことができます。以下に人工授粉の手順を解説しますので、ぜひ挑戦してみてください。

 

【人工授粉の手順】

(1)まずは受粉用に育てている品種の花から、花粉を採取していきます。

(2)花の下にコップなどをあてがい、筆や綿棒などの柔らかいもので花粉を落とします。

(3)採取した花粉を、筆などでもうひとつの品種に付着させて受粉を行いましょう。

オリーブの花は、開花から4〜5日ほどで花粉が飛び始めます。また、午前中にいちばん花粉が分泌されると言われていますので、この人工授粉作業は午前中に済ませると効果的です。

 

まとめ

今回は、観賞用としても人気が高いオリーブについて、用途別に見たおすすめの品種や、花を咲かせて実を作る方法などをご紹介してきました。

樹形が美しく、アンティークな雰囲気を持っているオリーブは、おしゃれな観葉植物としても人気が高く、鉢植えのインテリアグリーンとしても多く流通しています。

しかしせっかく育てるのでしたら、実の収穫まで楽しんでみたいですよね。開花条件を満たして受粉に成功すれば、室内でも結実させることが可能です。そのためには受粉用として2種類以上を一緒に育てなければなりませんが、オリーブは丈夫で育てやすい植物なので負担は大きくありません。

収穫した実をピクルスやシロップ漬けなどにして、自家製オリーブを楽しんでみてくださいね。