胡蝶蘭

ラ・メールコラム > 胡蝶蘭 > プレゼントに人気の種類豊富な蘭の花。分類や代表品種は?

胡蝶蘭などの華やかな姿でおなじみの蘭の花は、野生の品種だけで、約1〜3万種類もあると言われるほど種類が豊富なお花です。

今回は、そんな蘭の花について、蘭の中での分類分けや人気の品種をご紹介していきます。

エレガントな花姿の蘭の花はプレゼントにもおすすめですので、花選びに迷ったときはぜひ参考にしてみてくださいね。

 

地球上の1割を占める蘭の花

蘭の花は野生の品種だけで、約1~3万種類もあると言われるほど種類が豊富なお花です。

そこに品種改良による園芸品種を加えると、地球上で確認された維管束植物の10%は、蘭の花が占めている計算になるほどです。

地球上のほとんどに分布しているラン科の種類は、主に根の生え方と原産地で仲間分けしていきます。

 

地生蘭と着生蘭

蘭の花は、根の生え方によって、以下の種類に分けることができます。

地生蘭(ちせいらん) 地面に根を下ろして育つ
着生蘭(ちゃくせいらん) 木の幹や岩肌に着生して育つ
腐生蘭(ふせいらん) 共生している菌から養分を得る

それぞれの生態について、ひとつずつ説明していきましょう。

 

地生蘭

「地生蘭(ちせいらん)」は、一般的な植物と同じように、地面に根を生やして、土から養分や水分を吸収していく蘭の種類です。

乾期に備えて、雨期の間に茎や根を肥大させ、たっぷりと水分や養分を蓄えるという性質があります。

 

着生蘭

次に「着生蘭(ちゃくせいらん)」ですが、木の表面や枝、岩肌などの根を絡ませて着生した状態で育っていくタイプの蘭です。

宿主から栄養分を奪って育つ「寄生植物」と混同されがちですが、着生蘭はあくまでも場所を借りているだけで、水分や養分は空気中の水分を取り込んだり、光合成で作成したりと、他の植物から奪うことはありません。

主にジャングルといった熱帯雨林に生息しており、原産地ではほとんどが樹上に着生しています。

樹木に着生して根を絡ませた後に、基部から伸ばした茎が肥厚していき、空気中から取り込んだ水分や養分を蓄える器官へと変化していきます。

 

着生蘭は、植物界の中ではかなり新参者の立ち位置になります。

原種が地球上に誕生したとき、地上は先に生まれていた植物たちで埋め尽くされていました。そのため木や岩などの場所を利用して、根を絡めて着生するという生存戦略を取ったのです。

フラワーギフトとしておなじみの胡蝶蘭も、着生蘭の一種であるため、鉢植えには土が入っていません。

 

腐生蘭

「腐生蘭(ふせいらん)」はかなり独特な生態を持つ蘭で、植物が光合成を行うために不可欠な葉緑体を持っていません。

それではいったいどのように養分を得ているのかというと、腐生蘭は菌と共生することによって、菌から養分を得ているのです。

代表的なものには、アケビのような姿が特徴的な「ツチアケビ」や、常に土の中で生きている「リザンテラ・ガードネリ」などがあります。

 

洋蘭と東洋蘭

まずは、蘭の花を原産地で分類する方法です。

ラン科の植物の中でも、日本や中国といったアジア圏が原産地の品種は「東洋蘭(とうようらん) 」として、それ以外の地域が原産地の品種は「洋蘭(ようらん)」として分類されます。

洋蘭・東洋蘭に分けて、それぞれの代表種の名前や特徴をご紹介します。

 

東洋蘭の代表品種

東洋蘭は名前のごとく、これまで古くから培われた東洋人の美意識や生活になじみ深い趣が感じられるものが多いようです。

東洋蘭は花だけでなく葉芸、鉢も含んだ全体像が観賞対象とされるのが特徴ですが、中には、「根」を観賞するフウキランのような種類もあります。

その他、東洋蘭に含まれる「カンラン」は寒さに比較的強く、一般家庭でも比較的栽培しやすい種類です。

 

胡蝶蘭 

科・属 ラン科・ファレノプシス属
和名 胡蝶蘭(こちょうらん)
英名 Phalaenopsis, Moth Orchid
学名 Phalaenopsis aphrodite
原産地 東南アジア

東洋蘭の中では最も定番のフラワーギフトとして人気のある胡蝶蘭は、原種は茶色い花びらをしていて、今のように美しい鑑賞価値がありませんでした。

品種改良によって、今のような純白の花びらが美しい姿へと変化していったのです。

「幸福が飛んでくる」という縁起の良い花言葉を持ち、冠婚葬祭のどのシーンにも失礼にあたらないお花として贈答品として用いられます。

本来、胡蝶蘭の開花期は春なのですが、ギフトとしての人気の高さから温室での栽培が主流になっています。

温室栽培で開花サイクルを調節することによって、いつでも美しく開花した鉢植えを入手できます。

 

胡蝶蘭は着生蘭ですので、本来であれば樹木などに着生している植物です。そのため、ぐねぐねとした独特な根の形をしています。

学名の「ファレノプシスアフロディーテ」は、ギリシャ語で「蛾のような」という意味の「ファレノプシス」と、ギリシャ神話の女神・アフロディーテ(別名:ヴィーナス)の名前に由来します。

 胡蝶蘭は贈答品としての需要が高く、あまり品種名を重視されていない場合が多いのですが、一般的な代表品種には以下のようなものがあります。それぞれ詳しく見てみましょう。

 

アマビリス

お祝い事でよく用いられるのは、白系の胡蝶蘭の交配親として使われる「アマビリス」です。

アマビリスはサイズが大きすぎず飾りやすいので、贈り物に適しています。

 

ビオラセア

「ビオラセア」は、ビオラの花姿に似ている胡蝶蘭で、ビビッドな紫色の花の品種です。

香りがほとんどない胡蝶蘭ですが、ビオラセアにはスパイシーな香りがあります。

原産地では希少品種ですが、国内で栽培されているので入手しやすい品種です。

 

ファレノプシス・サクラコ・ファレノ

「ファレノプシス・サクラコ・ファレノ」は、「さくらこ」の愛称でも親しまれています。白地の花びらは中心に向けて薄紅に染まる、やさしいグラデーションカラーが人気の品種です。「世界らん展」でブルーリボン賞を受賞した品種です。

 

ユメザクラ

雅な名前の「ユメザクラ」は、淡い桜色が可愛らしい胡蝶蘭です。

主に中輪が流通していますが、ミディサイズも人気があります。

花の中心部が白く、薄い桜色と白の対比が繊細な印象の品種です。

 

シュンラン

科・属 ラン科・シュンラン属
和名 春蘭 (しゅんらん)
英名 Riverstream orchid
学名 Cymbidium goeringii
原産地 日本、中国

 

日本国内の北海道から九州までに分布しているシュンランは、日本の原産種を「日本シュンラン」、中国の原産種を「中国シュンラン」として分けられます。

日本シュンランは、蘭の花の色や葉の模様を観賞して楽しむものとして、中国シュンランは花の形の美しさや良い香りを楽しむものだとされています。

 

カンラン 

科・属 ラン科・シュンラン属
和名 寒蘭(かんらん)、春寒蘭(はるかんらん)、梛葉姫寒蘭(なぎのはひめかんらん)、台湾寒蘭(たいわんかんらん)
英名 Cymbidium kanran. Kanran.
学名 Cymbidium kanran
原産地 日本、中国、台湾

先ほどご紹介したシュンランの仲間である「カンラン」は、寒い冬に咲くため、漢字では「寒蘭」と書きます。

国産の蘭の花の中では大輪の品種で、花径が約4センチほどにもなります。

日本以外に中国や台湾にも分布している品種ですが、最も栽培数が多いのは日本のカンランです。

 

フウラン 

科・属 ラン科・フウラン属
和名 風蘭(ふうらん)
英名 Japanese Wind Orchid
学名 Neofinetia falcata
原産地 日本

「フウラン」は日本を原産とするランで、着生蘭の一種です。

気根は白色をしており、小花からは甘い香りが漂います。夜になると花の香りが強まるため、香りを楽しむランとしても人気です。

江戸時代から愛されている園芸品種で、花色には白、ピンク、緑などの淡いカラーが多くあります。

 

フウキラン

 

科・属 ラン科・フウラン属
和名 富貴蘭(ふうきらん・ふきらん)、風蘭(ふうらん)
英名 Japanese Wind Orchidm, Samurai’s Orchid
学名 Neofinetia falcata
原産地 日本、朝鮮半島、中国

ランの中でも最も高価だと言われる「フウキラン」は、先ほどご紹介した「フウラン」の変異種で、フウランの魅力でもある甘い香りの特徴を持っています。

江戸時代の大名にも愛され、花の美しさと甘い香りから、将軍への献上品でもありました。

愛好家の間では、優れているフウキランには一鉢で数百万円以上もの価格がつけられて取引されていることもあり、世界一高価なランでもあります。

 

洋蘭の代表的な種類

続いては、日本や中国以外を原産地とする、洋蘭の代表的な品種をご紹介していきましょう。

ここまでご紹介してきた東洋蘭と比較すると、洋蘭は鮮やかな花色と、豪華な花姿の品種が多く存在します。

 

カトレア

科・属 ラン科・カトレア属
和名 カトレア
英名 Cattleya
学名 Cattleya
原産地 ブラジル

豪華な花姿から「洋蘭の女王」と呼ばれる「カトレア」には、その姿から連想されるように「優美な貴婦人」「成熟した大人の魅力」「魔力」「魅惑的」といった、艶やかな女性をイメージする花言葉が並んでいます。

着生蘭であるカトレアは、南アメリカ・中央アメリカに自生しており、古くから貴族たちに愛されてきた贅沢なお花です。

 

デンドロビウム 

科・属 ラン科・デンドロビウム属
和名 デンドロビウム
英名 Dendrobium
学名 Dendrobium
原産地 アジア、オーストラリア、ニュージーランド

 

「デンドロビウム」も着生ランに分類される品種で、熱帯アジアなどの幅広い地域に分布しています。

デンドロビウムの名前の由来は、着生蘭であることから、ギリシャ語で「木」の意味を持つ「デンドロ」と、「ビウム(生じる)」が組み合わされています。花の形は胡蝶蘭にも似ていて、大輪であることも特徴です。

 

デンファレ

科・属 ラン科・デンドロビウム属
和名 長生蘭(チョウセイラン)、デンファレ
英名 cooktown orchid
学名 Dendrobium phalaenopsis
原産地 日本、熱帯アジア、ネパール、ニュージーランド

「デンファレ」の正式名称は「デンドロビウム・ファレノプシス」ですが、名称が大変長いため、デンファレの略称で呼ばれています。

デンファレの花の形も胡蝶蘭に似ていて、白やピンクの可愛い花は鉢植えの他、切り花やアレンジメント花材としても人気です。

「デンドロビウム・ビギバム」を原種にした交配種のことをデンファレと呼んでいて、先ほどご紹介したデンドロビウムなどの他のデンドロビウム属と区別されています。

 

シンビジウム

科・属 ラン科・シンビジウム属
和名 シンビジウム
英名 Cymbidium
学名 Cymbidium
原産地 インド、タイ、中国、フィリピン、インドネシア、オーストラリア

「シンビジウム」は、着生も地生もできる半着生タイプのランです。日本の寒さにも強く、冬のフラワーギフトとしてシンビジウムの鉢植えは人気があります。

ビビッドなカラーや豪華な見た目のものが多い洋蘭の中でも、シンビジウムには淡くてやさしい色合いのものが多く、派手な見た目が苦手な方にも好まれています。

そのやさしげな見た目から、「飾らない心」「素朴」「誠実な愛情」「深窓の麗人」といった花言葉がありますよ。

花の名前は、ギリシャ語で「舟」の意味を持つ「Kymbe」と「eidos(形)」を組み合わせているのが由来です。これは、花びらを正面から見たときに、丸く窪んでいる様子が舟底の形に例えられたことからきています。

花径のバリエーションが豊富にあり、小輪の花は3センチほどと可愛らしいサイズ感ですが、大輪のものは10センチ以上にもなります。

 

オンシジウム 

科・属 ラン科・オンシジウム属
和名 雀蘭(すずめらん)、群雀蘭(むれすずめらん)
英名 Oncidium, Butterfly orchid, Dancing lady orchid
学名 Oncidium spp.
原産地 中南米

黄色いフリルのような花が可愛らしい姿の「オンシジウム」は、垂れ下がるほどにたわわに花を咲かせるにぎやかなお花です。

たくさん花を咲かせる様子から、和名では「雀蘭(すずめらん)」「群雀蘭(むれすずめらん)」とも呼ばれています。

比較的小ぶりの花を持ち、甘い香りを放つのが特徴になります。

アレンジメント用の花材としても多く使われている人気のあるランです。

英名に、踊る女性のランという意味の「Dancing lady orchid」がありますが、これはオンシジウムの花姿が女性が踊っているように見えることから、花言葉に「一緒に踊って」が付けられました。

他にも、「可憐」「気立てのよさ」「清楚」など、愛らしい見た目の花にぴったりな花言葉が並んでいますよ。

 

バンダ

科・属 ラン科・ヒスイラン属(バンダ属)
和名 翡翠蘭(ひすいらん)
英名 Vanda
学名 Vanda Orchid
原産地 東南アジア

「翡翠蘭(ひすいらん)」という美しい名前を持つ「バンダ」は、深みのある濃い紫色の花が魅力的なお花です。

花びらには網目模様が入っており神秘的な雰囲気が漂います。蘭の花には青系の色が珍しいというのも、人気の理由のひとつです。

花色には、他に濃いピンク色のものや赤、白、黄色などもありますよ。

バンダはかなり太い根を持っている着生蘭で、自生するものでは2メートルにまで及ぶものもあります。

大きく生長していくバンダの花の名称は、サンスクリット語で「まとわりつく」という意味の「バンダカ」を語源とされています。

残念ながら一般で流通することはほとんどなく、洋蘭を専門に取り扱っている店舗や、ランの展覧会などで入手するのが主流です。

 

パフィオペディラム 

科・属 ラン科・パフィオペディルム属
和名 パフィオペディルム
英名 Ladyslipper
学名 Paphiopedilum
原産地 インド北部から東南アジア

世界4大洋ランのひとつでもある「パフィオペディルム」は、袋状の唇弁が特徴の魅惑的な姿を持っている洋蘭です。この唇弁には、巾着のような形やヘルメットのような形など、さまざまなフォルムが存在しています。

その独特な形から食虫植物として見られがちですが、パフィオペディラムに虫を捕食する性質はありません。パフィオペディラムのほとんどは地生蘭ですが、中には着生タイプの品種もあります。

学名の「Paphiopedilum」は、ギリシャ語で女神ヴィーナスを意味する「パフィア」と、サンダルを意味する「ペディロン」に由来していて、英名の「Ladyslipper」も「女神のサンダル(スリッパ)」という意味を持っています。

 

まとめ

今回は、プレゼントとして人気が高い、蘭の花の人気品種や生態、分類などについてご紹介してきました。

艶やかな姿で見る者を魅了する蘭の花たちには、多様な種類が存在していて花の形もさまざまです。

過酷な環境で生き抜いてきた品種ばかりなので、生命力が強く育てやすいのも人気の理由となっています。

今回ご紹介してきた蘭の品種はほんの一部ではありますが、個性豊かな蘭の花たちの中から、ぜひお気に入りの品種を見つけてみてくださいね。