胡蝶蘭

ラ・メールコラム > 胡蝶蘭 > エレガントな胡蝶蘭は初心者にも育てやすい!特徴や性質、基本の育て方

お祝いのシーンには欠かせない存在でもある胡蝶蘭。

鉢植えでのギフトが主流ですが、今まで花束は頂いたことがあっても、鉢植えをもらうのは初めてで、お世話に戸惑っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「高級なお花」のイメージが強い胡蝶蘭は繊細そうで、育て方も難しそうに思えてしまいますよね。

しかし、胡蝶蘭の育て方は意外と簡単で、お世話の手を抜きがちな人ほど、お花を咲かせると言われているほどなんですよ。

今回は胡蝶蘭を育てるのが初めてという初心者の方向けに、胡蝶蘭のルーツや生態、基本的な育て方などをご紹介していきます。

 

胡蝶蘭の基本情報

まずは胡蝶蘭の基本情報を見ていきましょう。

科・属 ラン科・ファレノプシス属
和名 胡蝶蘭(こちょうらん)
英名 Moth orchid
学名 Phalaenopsis aphrodite
原産地 台湾南部、フィリピン、インドネシアなど

胡蝶蘭は、東南アジアを中心に自生しているラン科の植物です。

原種が発見されてからというもの、品種改良をたくさん重ねられた結果、今のような美しい花姿になっていますが、原種の胡蝶蘭の花色は真白な美しさはなく、黄ばんだような色だったと言われています。

 

名前の由来

「胡蝶蘭(こちょうらん)」とは、蝶が舞うような花の形をしているために名付けられた和名です。

学名では「ファレノプシス」と呼ばれています。ファレノプシスとは「蛾のような」という意味を持ち、日本では蝶に例えたところを、世界では美しい蛾に例えたのですね。

どちらも姿は似ていますから、お花に対する見え方は世界共通なのでしょう。

 

胡蝶蘭のルーツや生態を知ろう

植物を育てていくうえで、その植物の本来の生育環境を知っておくことはとても重要です。

なるべく自生地の環境に近づけることで、植物を元気に育てていくことができますよ。

まずは、胡蝶蘭の生態や誕生ルーツなどからご紹介していきたいと思います。

 

胡蝶蘭は着生植物

胡蝶蘭は着生植物の仲間です。「寄生植物」と聞くと、他の植物に寄生してエネルギーを奪いながら生長していく植物の姿をイメージできると思います。

観葉植物で人気のある「ガジュマル」は寄生植物で、その生命力はすさまじく、根の締め付けの強さに耐え兼ねて宿主の植物が枯れてしまうことから、「絞め殺しの木」という怖い別名まであります。

それでは、「着生植物」という名称を聞いたことはあるでしょうか?

 

胡蝶蘭は着生植物の一種です。着生植物とは寄生植物とは異なり、他の木などに張り付いて育つところは同じですが、他の植物の栄養分を奪って育つということはありません。

言うなれば「育つ場所だけ借りている」という状態で、自らの成長に必要なエネルギーなどは自分で調達してくるものです。

自生する胡蝶蘭は、高い樹木の枝などに着生していることが多く、木漏れ日の差し込むような半日陰の柔らかい日差しを好みます。

そのため、鉢植えの胡蝶蘭に土は必要ないので、代わりに水苔や、松などの樹皮を砕いたバークといった保水性と吸湿性に優れている植え込み材料が使われているのです。

高級そうでエレガントな花姿にはなかなか結び付かない、ワイルドな生態ですよね。

 

着生植物では、砂漠で転がりながら育つ「チランジア」や「ビカクシダ」なども有名です。

ビカクシダは、葉がコウモリの羽の形に見えるため「コウモリラン」という別名でも有名なのですが、ラン科ではなくシダの仲間です。胡蝶蘭のように花を咲かせることはなく、胞子によって子孫を増やしていきます。

着生植物の中でも、ラン科に入る植物は「着生ラン」と呼ばれていて、胡蝶蘭は着生ランのグループに入ります。胡蝶蘭の他には、シンビジウム、カトレア、デンドロビウムなどが同じグループに属しています。

 

着生ラン・地生ラン・腐生ラン

着生植物に分類されるラン科の植物は、着生ランと呼ぶことに対して、土に根を張るラン科の植物は「地生(ちせい)ラン」と呼びます。

さらに、光合成を行なわない「腐生ラン」というグループもあり、うっそうとした森の中でひっそりと育つ「ツチアケビ」は腐生ランの仲間です。ツチアケビは、アケビの実によく似ている、大きな細長い赤い実を付けます。

腐生ランの仲間の最大の特徴として、葉を持っていないことが挙げられます。葉緑体を持つ葉によって、多くの植物は光合成で養分を作りますが、ツチアケビにはそもそも葉緑体がないのです。もし葉があったとしても、白や黒といった色をしていて葉緑体組織は含まれません。

光合成ができないツチアケビは、「菌従属栄養植物(きんじゅうぞくえいようしょくぶつ)」という分類で、ナラタケ菌というキノコを取り込んで、菌類と共生することによって必要な養分を得ています。

ランの仲間には野生種類だけで15,000種類以上あると言われていますから、その生態もさまざまなのですね。

胡蝶蘭誕生のルーツ

それでは、胡蝶蘭が土に根を張らず、岩や木などに根を張って生きているのはなぜでしょうか。着生ランが地球上に誕生した頃にまで遡ると、その理由が分かってきます。

着生ランの原種は、比較的遅くに地球上へ誕生しましたが、地面には先に生まれていた他の植物たちで埋め尽くされていました。

地面は競争率が高く、光合成に必要な日光を充分に得られそうなスペースもありません。動物などに捕食される恐れもあります。

そのため、胡蝶蘭は自らが生きる場所として、木の上や岩肌を選びました。土と違って水分や養分を容易に吸収できない場所ではありますが、競争率は低く、虫や動物に襲われる危険も減ります。

過酷な環境下でありながらも、自らの器官を発達させていき、見事胡蝶蘭の生存戦略は功を奏しました。今ではラン科の植物の7割ほどが着生種であるほどです。

 

着生ランの生態の仕組み

土に根を張らずに育つ着生植物は、いったい養分をどうやって得ているのでしょうか。

その鍵は、胡蝶蘭の特徴とも言える「ぐねぐねとした根」にあります。

一般的に土に根を下ろす地生植物は、根で株全体を支えて養分を吸収していきます。

同様に、胡蝶蘭の根も同じ働きをしますが、地生植物と大きく異なる点に、「根が乾燥に強い」ということが挙げられるでしょう。

一般的な地生植物の根は、根が土から出ると萎びていってしまいます。

一方で、胡蝶蘭を鉢植えで育てていると、だんだん鉢から太い根が溢れ出ますが、乾燥して干からびてしまうことはありません。

そもそも、自生している環境下では胡蝶蘭の根は空気中に出ているのが常なのです。

 

胡蝶蘭の根の中には、細い芯のようなものが通っています。この芯は、植物全体に水分を送るポンプの役割を果たしているものです。

その芯を包むようにして多肉質の組織があり、この組織には送られてきた水分を蓄えておくタンクの役割があります。

根の表面は白い皮のような組織で覆われており、よく見ると細かい毛がびっしりと生えているのですが、この白い皮から空気中の水分を吸収しているのです。

胡蝶蘭の美しい花びらや葉は、どちらも肉厚ですよね。これは、水分の確保が難しい中、必死に集めた水分を、なるべく確保しておくために肉厚にできているのです。

 

胡蝶蘭は神経質にお世話しなくても大丈夫

胡蝶蘭のお世話では、こまめに観察してお手入れしている人よりも、やや放置気味に育てている人のほうが花を咲かせやすい、という話もあるほどです。

美しく咲かせたい気合が入っていると、かえって水を与え過ぎたり、置き場所を頻繁に移動させたりすることで、株にとって良くない効果をもたらしています。

気負い過ぎずに、ちょっと肩の力を抜いて育てるくらいでちょうどいいのかもしれませんね。こんなエピソードを聞くと、「私にも胡蝶蘭を上手に育てられるかもしれない!」と自信が湧いてくるかもしれません。

 

基本的な育て方をマスターしよう

ここまでで、胡蝶蘭の歴史やルーツについて、とても詳しくなったことと思います。

本来の生育環境や特徴が分かったら、続いてはいよいよ基本的な育て方について学んでいきましょう。

初めに述べたように、胡蝶蘭の育て方はとても易しく、手間を掛け過ぎないくらいがちょうど良いこともあります。

基本さえ抑えれば、胡蝶蘭のお世話は簡単です。あまり身構えすぎずにチャレンジしてみてくださいね。

 

まずはラッピングを外す

フラワーギフトとして頂いた胡蝶蘭には、鉢がきれいにラッピングされていると思います。

外してしまうのはもったいない気がしますが、包んだままだと鉢内の様子を観察できません。ラッピングによって鉢内の温度が上昇して蒸れてしまい、根にダメージが及んでしまうこともあるので、家へ持ち帰ったらなるべく早くに包みをほどいておきましょう。

 

置き場所

先述したように、胡蝶蘭の本来の生育環境は熱帯地域のジャングルの中になります。

樹高の高い木の枝などに着生して、木漏れ日のような柔らかな日差しを受けつつ、根から空気中の水分を吸収して生きている植物です。

つまり、胡蝶蘭の鉢植えを育てる環境として適しているのは、原地のように暖かく、湿度がある程度ありつつも風通しの良い環境です。なるべくでいいので、スツールの上や棚の上など、多少高い位置に鉢を置くと良いでしょう。

自生地のような完璧な環境を用意することはもちろんできませんが、なるべく近付けるだけでも元気に育ちやすくなります。

 

置き場所の基本としては、直射日光や強い日光の当たる場所は必ず避けて鉢を置きましょう。強すぎる日差しは、葉焼けを起こしてしまいます。焼けた部分の組織は破壊されてしまうので、光合成が行えなくなってしまい、葉焼けが広範囲に及ぶと株の健康にも関わるので注意が必要です。

特に胡蝶蘭は木々の隙間からうっすらと差し込む木漏れ日を好みますので、強い日光にはびっくりしてしまいます。自生地の環境を思い浮かべながら、窓際に置く場合にはレースカーテン越しやブラインド越しぐらいの日光が当たるように調節しましょう。

根から水分を吸収する胡蝶蘭は、湿度を好むため乾燥にも弱いです。冷暖房の風が直接当たる場所に置くと、みるみる水分が奪われて乾燥してしまいますので避けましょう。

 

水やり

胡蝶蘭を枯らしてしまう原因の大半に、「水の与えすぎ」という理由があります。

少ない水でも生きられる胡蝶蘭はとても根腐れを起こしやすい植物です。やや乾燥気味に育てることを念頭に置いて水やりの頻度を調節していきましょう。

水苔、バーク、コルクなどの植え込み材料の乾燥具合をチェックしてみて、軽く指で押して乾いていればお水を与えます。湿っているようでしたら水やりは控えましょう。

 

水やりの時間帯としては、鉢内が多湿状態になると根腐れの原因になりますので、水やりはなるべく午前中に行ない、日中に乾燥させるようにします。

春は10日ほど、夏は1週間ほど、秋と冬は3週間ほどの間隔を空けて、1株に対して500ミリリットルぐらいのお水を与えると良いでしょう。

また、水やりの後に受け皿に溜まっている水は、都度こまめに捨てておかないと湿度が上がって根腐れの原因になります。

通気性が悪くなり、雑菌の繁殖にも繋がりますので、水やりの度に捨ててくださいね。

 

葉水

高温多湿の環境下を好む胡蝶蘭には、霧吹きなどで根や葉に水を定期的にかけてあげると喜びます。

特に室内で管理している場合には、夏や冬には冷暖房の使用によって部屋が乾燥しがちです。水やりとあわせて葉水を行なうと、株が元気に活き活きと育ってくれるでしょう。

乾燥すると、変色したつぼみができたり花が弱ったりしますので、胡蝶蘭の鉢の近くに加湿器などを置いて、室内の湿度を調節するのもおすすめです。

温度管理

熱帯生まれの胡蝶蘭は、日本の冬が苦手です。基本的には室内で管理して、15度以上を保てるとベストでしょう。

冬季に窓際に鉢を置いて管理している場合には、夜間の冷え込みに注意が必要です。日中との温度差と窓から入り込む冷気によって、根が傷んだり株が凍結してしまったり、春を迎えられずに枯れてしまう危険もあります。

日中はなるべく日に当てるようにして、冷える夜間には部屋の奥へ移動させるなど、防寒対策を行ないましょう。

 

花びらには触れない

胡蝶蘭の肉厚で清らかな花びらは、とても美しいので触れたくなってしまいます。

ですが、花に触れた際に雌しべが刺激されると、受粉が完了したと勘違いして花が萎んでしまうことがあります。

胡蝶蘭のお花は1〜2ヶ月もの長い間楽しめますから、早々に萎ませてしまうのはもったいないですよね。お花をなるべく長く楽しみたい方は、花びらを触り過ぎて刺激しないよう気を付けましょう。

 

植え替え

植え替えの適期は、株が生長期を迎える春に、花が終わった後に行ないましょう。

3本立てや5本立てなど、寄せ植えで販売されている状態の胡蝶蘭は、1株ずつに分けて育てていくことをおすすめします。

2年以上同じ鉢で育てている場合にも、植え替えが必要です。

 

【植え替え手順】

  1. 傷つけないように根を広げながら、根に付いた水苔などを取り除いていきます。
  2. このとき、傷んでいる根があれば切れ味の良い清潔なハサミなどでカットします。
  3. 水苔を湿らせて手の平くらいのボール状にしましょう。
  4. 水苔の上に根を広げた胡蝶蘭を被せたら、根を水苔で覆っていきます。
  5. 鉢底石を敷いた新しい鉢に、胡蝶蘭の株を植え付ければ完成です。
  6. 2週間ほど水を与えずに植え込み材を乾燥させ、以降は通常のお世話に戻します。

 

植え替え中に、健康な根を誤って傷つけると、傷口から雑菌が入って株を弱ってしまいますので、細心の注意を払ってやさしく植え替え作業を行ってくださいね。

 

肥料

胡蝶蘭には基本的に肥料は必要ありませんが、株の生長を促進させたり、花つきを良くしたりしたい場合には肥料を与えます。

生育期である5~9月頃に、1,000~3,000倍で希釈した液体肥料を水やり代わりに与えると良いでしょう。

肥料を与え過ぎると「肥料焼け」を起こして、株が弱る原因になるので、与え過ぎには注意してくださいね。

 

支柱

胡蝶蘭の枝が伸びてきて、小さなつぼみがいくつかついてきたら、支柱で枝を支えてあげましょう。上手に枝を誘引することで、枝を整えて美しく花を咲かせることができます。

誘引する花茎の根元からやや離して支柱を立て、取付具で緩く固定しましょう。支柱を立てた後には鉢の向きを変えないようにすると、お花が咲く向きが揃うのできれいに仕上げられますよ。

まっすぐに枝を立てるか、前かがみ気味にするかはお好みで決めていただいて問題ありません。

まとめ

今回は、高級なお花の代表格でもある胡蝶蘭について、初心者向けの育て方を解説してきました。

胡蝶蘭の性質やルーツなどを踏まえてお世話をすれば、管理はとても簡単な植物です。

もともとの生命力が強いお花なので、多少お世話を忘れてしまったとしてもたくましく育ってくれますよ。

見た目の繊細さや高級感とは異なり、とてもワイルドな性質を持っている胡蝶蘭を知ることで、より胡蝶蘭を好きになっていただければ幸いです。