地球上に生息するお花のなかで最も美しいとされているのがバラです。「花の女王」とも呼ばれ、古くから愛されてきました。特に紀元前に栄えた古代ローマ帝国では、バラが大人気。当時の記録をひも解いてみると、ローマの人々は「バラの上で眠り、歩き、食事をした」という記述が残っています。キリスト教徒を迫害したり、自分に反対する人々を殺害したりといった行為から「暴君」とされてきたローマ皇帝のネロもバラをこよなく愛した人物です。「バラ狂い」と呼ばれるほどで、バラの花を浮かべたお風呂に入り、バラのオイルを身体に塗るなど美容にバラを用いていたほか、バラをお酒やデザートに加工して楽しんでいたと言われています。

しかし、ローマ帝国衰退後には、バラの人気は度が過ぎているとみなされ、キリスト教の禁欲的な道徳観にはそぐわないとされてしまいました。そのため、一般的な栽培が禁止され、神に捧げるためのバラだけが栽培されてよい事となったのです。時を経て1300年頃、ルネッサンス文化の開花とともに、一般の人々が再びバラを楽しめるようになりました。ルネッサンス文化開花の背景には「神への信仰を中心とした敬虔な生き方をするだけではなく、人の個性や自由を尊重しよう」という理念があるためです。バラは芸術にも影響を与え、当時描かれた絵画には、バラの絵が登場するようになりました。

ルネッサンス期に描かれたバラの絵をよく見てみると、ピンク色のバラであることがほとんどです。当時のヨーロッパでは、「オールドローズ」と呼ばれる白またはピンクのバラしか存在しなかったためです。19世紀初頭には、中国のバラがヨーロッパに渡ってきます。当時の人たちが驚いたのは、中国のバラは鮮やかな赤い色をしていることでした。現在、ヨーロッパの男性たちは好きな女性にお花をプレゼントするときは、赤いバラを選ぶことが多いのですが、昔はヨーロッパに赤いバラが存在しなかったのです。

そのころ、ナポレオンの妻であったジョセフィーヌによってバラの品種改良がなされるようになりました。彼女のバラへの情熱は並々ならぬもので、当時フランスと敵対関係にあったイギリスからバラを届けるために、敵軍同士で特別な取り決めがなされていたほどです。

歴史を除いてみると、いつの時代もバラは人の心を捉えていました。現代でも、バラは人気が高いお花ですし、熱心なコレクターや栽培家も少なくありません。これほど人の心を魅了するお花ですから、お祝いなどにお贈りすれば、喜んでいただけるのではないでしょうか。